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肺切除術後の肺静脈血栓症・脳梗塞症発症の高リスクをまとめ論文発表-京都府医大ほか

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2024年09月17日 AM09:10

術後の血栓形成・梗塞の問題、術中管理で麻酔科医が重要な役割

京都府立医科大学は9月6日、肺葉手術後の肺静脈血栓症に由来する塞栓症・脳梗塞発症の高リスクに関する総説をまとめたと発表した。この研究は、同大附属病院の佐和貞治病院長、京都府立医科大学大学院医学研究科麻酔科学のSaeyup Pipat助教、木下真央助教、甲斐沼篤病院助教、小川覚講師、天谷文昌教授、近畿大学医学部麻酔科学講座秋山浩一講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Anesthesia」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

肺がんや転移性肺腫瘍の大部分の肺切除手術は、現在、ビデオ支援胸腔鏡手術(以下、VATS)やロボット支援胸腔鏡手術などの最小侵襲手術によって行われている。2010年以降、日本では特に肺切除手術後の術後脳梗塞(以下、POCI)が多く報告され始めた。それ以来、これらの発生に関わる発生率や解剖学的機序についての統計報告が公表されている。多くの場合、左上葉の肺静脈切除端(以下、PVS)で血栓が形成され、(以下、CI)を引き起こし、さらには腎臓や脾臓など体のさまざまな臓器に塞栓症を引き起こす可能性がある。近年、術後の血栓形成と梗塞の問題は、術中管理において麻酔科医が重要な役割を果たすにも関わらず、麻酔学分野では日本の麻酔科医による僅かな症例報告を除き、十分に取り組まれていなかった。肺切除後の血栓症と梗塞に関する追加の症例報告の収集は、麻酔科医の視点からの予防、治療、管理の重要性のために不可欠だ。

肺切除後の肺静脈血栓症・臓器梗塞8割は2010年以後の報告、VATS普及が関与の可能性

PubMedデータベースで「pulmonary vein stump」「thrombosis」「cerebral infarction」「lobectomy」「lung resection」を含むキーワード検索を行い1989年~2024年の過去36年間に各国から報告された46報67件の肺切除後の肺静脈血栓症・臓器梗塞の症例報告のうち、切除部位と患者の年齢も明記されている文献を対象とした。患者67人の平均年齢は67.2±10.0歳(中央値=70歳;25〜75パーセンタイル:64.0〜73.0歳)、男女比は39(58.2%)対28(42.8%)だった。46報のうち39報(84.8%)は2010年以後の報告であるため、VATSの普及が関与している可能性が考えられた。

肺切除後に35人(52.2%)がCIを、17人(25.3%)がCIなしの血栓症を、8人(11.9%)が腎梗塞を、4人が急性四肢または腕の虚血を、3人(6.0%)が脾臓梗塞を経験していた。肺切除の手術部位に関して、47人(70.1%)が左上葉切除(以下、LUL)、8人(11.9%)が左下葉切除(以下、LLL)、5人(7.5%)が右下葉切除(以下、RLL)、4人(6.0%)が右上葉切除(RUL)を受けていた。年間統計によると、2004年頃から肺葉切除後のCIの報告が増加している。またこれらの報告のうち、36件(78.3%)は日本からの報告だった。

肺葉切除術後の脳梗塞発症、大半は術後20日以内

肺切除後の血栓症またはCIの発症のタイミングに関して、これまでの症例報告では、手術当日の発症から手術後7~40年の範囲で広がっていた。しかし、CIの大部分は手術後20日以内、特に手術後5日以内に発生していた(中央値:5日、25〜75パーセンタイル範囲:2〜53.8日)。最も早く発症した症例では、左上葉肺がんのためVATSを受けた男性が手術当日、急性虚血性脳卒中を発症しており、術後早期の対応が求められる。一方で、術後7年や10年、40年でPVS血栓症と診断されている報告もあり、潜在的な遅発性合併症を監視し管理するための長期間の術後フォローアップの必要性も示している。

肺葉手術後の脳梗塞発症などの症例、術後早期の抗凝固療法の適応検討を

2013年以後、22件の臨床研究の報告によると、肺葉切除術の0.14%〜0.52%が脳梗塞を発症しており、脳梗塞を発症した29.3%〜77.3%が左上葉切除と報告されている。左上葉切除が圧倒的に多い理由として、左肺静脈切断端が他の部位より有意に長くなる傾向があり、肺静脈切断端血栓が形成されやすいことが指摘されている。肺葉手術後の脳梗塞発症などのハイリスク症例に対し、術後早期の抗凝固療法の適応検討が必要だ。術後の血栓形成に影響を与える周術期の輸液管理や術後早期の抗凝固療法導入と対立する持続硬膜外麻酔の適応是非については、重要な検討課題だと、研究グループは指摘している。

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