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セロトニンに性腺刺激ホルモン分泌促進作用、ラットとヤギで確認-名大

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2024年05月10日 AM09:30

セロトニンニューロンがグルコース感知・活性化、生殖機能との関連は?

名古屋大学は5月7日、抗うつ作用を有するセロトニンを分泌するニューロンが、脳内の高いグルコース利用状態を感知して卵胞発育を促す生殖中枢であるキスペプチンを分泌するニューロンを活性化し性腺刺激ホルモン分泌を促すことを、ラットとヤギのモデルで明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生命農学研究科の中村翔特任准教授、上野山賀久准教授、井上直子准教授、大蔵聡教授、束村博子名誉教授(責任著者)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳内でキスペプチンニューロンは、性腺刺激ホルモンの分泌に必要不可欠であり、ヒトを含むほ乳類の生殖機能を最上位から制御することが知られている。特に、脳の視床下部弓状核に分布するキスペプチンニューロンは、パルス状(間欠的な放出)の性腺刺激ホルモン分泌を介して卵胞発育を制御している。研究グループは、セロトニンニューロンがグルコースを感知して活性化することを明らかにしていたが、生殖機能との関連はこれまで不明だった。

ラットの弓状核キスペプチンニューロン6割にセロトニン受容体発現

今回、研究グループは、弓状核キスペプチンニューロンの約60%にセロトニン受容体が発現していることをラットで明らかにした。

SSRI・脳内グルコース利用阻害によるセロトニン増で、性腺刺激ホルモンのパルス状分泌が回復

脳内の主要なエネルギー成分であるグルコースの利用を阻害すると性腺刺激ホルモンのパルス状分泌が抑えられる。うつ病治療に使用される選択的セロトニン再取り込み阻害剤を、弓状核を含む視床下部内側基底部へ投与することでセロトニンの作用を増強すると、性腺刺激ホルモンのパルス状分泌が回復した。また、脳内のグルコース利用を阻害した場合でも、多数のセロトニンニューロンが局在する背側縫線核へグルコースを直接投与すると、視床下部内側基底部内でのセロトニン分泌量が増加し、性腺刺激ホルモンのパルス状分泌が回復した。

ヤギでもセロトニンが弓状核キスペプチンニューロン活性化、性腺刺激ホルモン分泌上昇

続いて、ヤギの弓状核キスペプチンニューロンの活動を直接記録する多ニューロン発火活動(MUA)記録法を用いて、反芻家畜であるヤギにおいてもセロトニンが弓状核キスペプチンニューロンを活性化させ、性腺刺激ホルモン分泌を上昇させることを明らかにした。

これらの研究結果から、本研究グループは、セロトニンニューロンが脳内のグルコースが豊富に存在することを感知し、その結果セロトニン分泌が増加し、卵胞発育中枢である弓状核キスペプチンニューロンを活性化させ、生殖機能を促進していることを世界で初めて明らかにした。

ヒトの不妊治療や家畜の繁殖障害治療などへの応用に期待

ストレスや低栄養、うつ病などは生殖能力を低下させることが知られている。実際に、うつ病を発症する女性は、その後、不妊を経験する可能性が通常と比べ2倍高いことが知られている。また、家畜の繁殖障害の約50%、ヒトの不妊症の約25%は、視床下部の繁殖中枢の機能不全によると考えられている。同知見は、ヒトの不妊治療や家畜の繁殖障害の治療などへの応用が期待される、と研究グループは述べている。

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