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心房細動カテーテルアブレーション半年後以降の抗凝固療法の継続で新知見-国循ほか

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2023年12月27日 AM09:00

「継続のメリットあり」と示唆、一方で大規模な検討はされておらず

国立循環器病研究センターは12月20日、心房細動に対するカテーテルアブレーション後の6か月以降の抗凝固療法の継続は、脳梗塞リスクスコアであるCHADS2スコアが2点以下の患者群では脳梗塞の発症抑制とは関連せず、重大な出血の増加と関連すること、一方、CHADS2スコアが3点以上の患者群では重大な出血を増加することなく脳梗塞の発症抑制と関連することを、国内レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて明らかにしたと発表した。この研究は、同センター情報利用促進部の金岡幸嗣朗室長、岩永善高客員部長、奈良県立医科大学の今村知明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Heart Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心房細動が原因となる脳梗塞は、重症化する傾向があり、要介護状態や死亡につながる場合もある。心房細動に対する経皮的心筋焼灼術()は、心房細動に対する根治的な治療法として、日本でも近年多くの患者に治療が行われている。カテーテルアブレーションを行うことで、心房細動を根治できる場合も多い一方、患者の一部で再発がみられることもある。心房細動においては脳梗塞の発症を抑制するため抗凝固療法が行われるが、ガイドラインでは、カテーテルアブレーション後の抗凝固療法の継続について、脳梗塞のリスクが高い患者には抗凝固療法を継続するメリットがある可能性が示唆されているものの、これまでカテーテルアブレーション後の抗凝固療法の継続の有用性に関する大規模な検討はなかった。

CHADS2スコアごとの、カテーテルアブレーション後の抗凝固療法の継続率を算出

研究グループは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)を用いて解析を行った。NDBからは2014年度~2020年度に、心房細動に対する初回のカテーテルアブレーション治療を受けた患者を対象とした。主要エンドポイントは、脳梗塞を含む塞栓性イベント、重大な出血イベントとした。まず、CHADS2スコアごとの、カテーテルアブレーション後の抗凝固療法の継続率を算出し、次に、(1点以下、2点、3点以上)の各群において、6か月時点での抗凝固療法の継続の有無で患者を2群に分け、逆確率重み付け法等を行い、背景因子を調整し、その後の主要エンドポイントとの関連について解析を行った。

CHADS2スコアが2点以下の患者群では重大な出血の増加と関連

初回の心房細動に対するカテーテルアブレーションを受け、明らかな心房細動の再発を認めない患者のうち、23万1,374人の患者について解析を行った。71%の患者が、術後6か月時点で抗凝固療法の継続を受けており、CHADS2スコアの高い群では抗凝固療法の継続率が高い結果だった。CHADS2スコアが2点以下の患者群では、6か月時点での抗凝固療法の継続は、その後の重大な出血の増加と関連する一方で、脳梗塞の発症抑制とは関連を認めなかった。一方、CHADS2スコアが3点以上の患者群では重大な出血を統計学的に有意に増加させることなく、脳梗塞の発症抑制と関連することが示された。

研究から、心房細動に対するカテーテルアブレーション後の抗凝固療法は、術後も多くの患者で長期間継続されているという現状が明らかとなった。一方、脳梗塞リスクが低いカテーテルアブレーション後の患者に対する抗凝固療法の継続は、継続による脳梗塞抑制のメリット以上に、重大な出血によるデメリットの方が上回る可能性が示唆された。「現行の抗凝固療法の継続方針の決定に貢献する重要なエビデンスとなることが期待される」と、研究グループは述べている。

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