医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > コロナ禍でTwitterのみの利用は「幸福感」に負の影響、大学生対象の調査結果-筑波大

コロナ禍でTwitterのみの利用は「幸福感」に負の影響、大学生対象の調査結果-筑波大

読了時間:約 3分37秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年04月11日 AM11:20

投稿やそれに用いる感情表現は個人特性と関係、先行研究で

筑波大学は4月10日、(以下、ツイッター)などのSNSを使用する日本の大学生を対象に、コロナ禍において、一般的信頼感や自己意識、自己呈示欲等の個人特性、オンラインコミュニケーションスキルがユーザーの幸福感に及ぼす影響を調査し、その結果を発表した。この研究は、同大図書館情報メディア系の叶少瑜(よう しょうゆ)准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ツイッターユーザーの投稿に関する先行研究として、投稿における感情表現は、ユーザー自身の動機と関係するだけでなく、その動機は社会的ネットワークのサイズによって異なることが知られている。また、機械学習を用いた分析により、社会的ネットワーク情報からユーザーのパーソナリティを、また、言語統計情報と使用単語からメンタルヘルス等を推定できることが報告されている。

これらの知見に基づき、研究グループは、ツイッターを使用する大学生の社会的スキルとツイート数や、それにおける感情表現・トピックの種類と主観的幸福感との関係について検討してきた。その結果、社会的スキルの高い人は幸福感が高く、あまりネガティブ表現を使わなかったこと、ツイート数の多い人はネガティブ表現をより多く使うこと、ネガティブ表現をあまり使用しない人ほど幸福感が高いこと、社会的な出来事や個人の趣味等のトピックは負の相関関係があることなどを明らかにしてきた。すなわち、ツイッター上の投稿やそれに用いる感情表現は個人特性と関係しており、それによって投稿するトピックの種類や幸福感との関係も異なることが示唆されている。

2019年1月~2021年6月の投稿等を自然言語処理で分析

)の拡大や緊急事態宣言といった非常事態を経験した後、不安感情の高い人がツイッター上で使用するネガティブ表現は激増していることが報告されている。そこで研究グループは、COVID-19が流行する前と流行中において、日本の大学生を対象に、利用している各種SNS(ネット交流サービス)の種類に応じて分類し、学年ごとに比較・分析した。対面に比べて、オンライン上では行き過ぎた自己呈示が行われやすいことから、ユーザーの自己呈示欲等の個人特性とオンラインコミュニケーションスキルの影響を考慮して、ツイート・リツイートの内容と幸福感との関係の究明に取り組んだ。

研究グループはこれまで、ユーザーがツイッターを利用し情緒的サポートを獲得できることを究明するとともに、投稿内容から投稿者の興味関心のあるトピックや内容の感情表現がどれほど自身の幸福感に寄与するかの予測モデルを提案してきた。研究では関東地域の大学に在籍する1,681人の大学生を対象に調査を行い、自己呈示欲等の個人特性とツイッター使用、および幸福感に関して測定した。そのうえ、ツイッターのアカウント名を記入し、2019年1月〜2021年6月の2年半の間に公開ツイート・リツイートのある大学生のログデータを自然言語処理(AIによるテキストデータ分析)で分析した。

「ツイッターのみ」ユーザーで、ポジティブ文の割合が最低

最終的に、577人が研究の分析対象となり、SNSは、Facebook(フェイスブック)、LINE(ライン)、Instagram(インスタグラム)とツイッターの4種類を取り上げた。これらを使用する組み合わせのパターンは、LINE、インスタグラムとツイッターの3種類を併用している人が最も多く(282人)、次に、LINEとツイッター(149人)、ツイッターのみ(70人)だった。

そして、コロナ前とコロナ禍における投稿に用いた表現について分析したところ、調査期間全体を通して、ポジティブ文の割合はやや減少し、ネガティブ文の割合は増加したことがわかった。3つのSNS使用パターンで比較したところ、ツイッターのみを使用しているユーザーのポジティブ文の割合が最も低く、ネガティブ文の割合が最も高いことが示された。

2020年4月入学の大学2年生、ポジティブ文の割合が最低

また、投稿に用いられた表現を学年ごとに比較したところ、ポジティブ文の割合は、1年生と3年生が増加した後に減少したのに対して、2年生と4年生は減少した後に増加しており、とりわけ、2年生のポジティブ文の割合が最も低いことが示された。一方、ネガティブ文の割合は、3・4年生は2年半にわたって増加したが、1年生は減少した後に増加し、2年生は急増した後に横ばい状態になっていた。これは、他の学年に比べて、2年生(2020年4月に入学)は、多くの面で社会生活が制限されたことによると考えられる。

自己アピール因子、「ツイッターのみ」ユーザーで幸福感を低下させる

さらに、大学生の幸福感に関与する要因について、3つのSNS使用パターンで分析・比較したところ、自己確立因子はいずれのパターンにおいても幸福感を向上させる効果がある一方、ツイッターのみを使用するユーザーの場合、自己アピール因子が幸福感を低下させていることがわかった。ツイッターのみを使用するユーザーの自己アピール因子は、他のユーザーに比べて高いわけではないが、自己確立因子が最も低いことから、自己アイデンティティの確立が不十分な人が、視覚的匿名性の高いツイッターのみを使用する場合、精神的健康を損なう可能性が示唆された。

研究グループは、ツイッターユーザーの個人特性とともに、公開されているツイート・リツイートの特徴から、主観的幸福感を推定できる手法についてさらに研究を進めており、ツイート・リツイートの傾向分析、およびその精度向上や可視化を進めている。「より健全なSNSの使い方の提案とともに、必要な人に適切なサポートを提供することが可能になると考えられる」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか
  • 乳児股関節脱臼の予防運動が効果的だったと判明、ライフコース疫学で-九大ほか
  • 加齢黄斑変性の前駆病変、治療法確立につながる仕組みを明らかに-東大病院ほか
  • 遺伝性不整脈のモデルマウス樹立、新たにリアノジン受容体2変異を同定-筑波大ほか
  • 小児COVID-19、罹患後症状の発生率やリスク要因を明らかに-NCGMほか