医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 新型コロナワクチンのブースター接種、年齢問わず感染予防効果あり-神戸大ほか

新型コロナワクチンのブースター接種、年齢問わず感染予防効果あり-神戸大ほか

読了時間:約 3分48秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年02月03日 AM11:30

2回、3回のワクチン接種で誘導のオミクロン株に対する中和抗体を年齢別に他の変異株と比較

神戸大学は2月1日、2021年6月~2022年1月にかけて、ファイザー社製新型コロナウイルスmRNAワクチン(Pfizer/BioNTech BNT162b2)を2回接種した神戸大学医学部附属病院の医師82人を対象に、接種後約2か月と7か月の時点の血清中における新型コロナウイス(SARS-CoV-2)変異株(オミクロン株を含む)に対する中和抗体を測定。さらに、3回目の接種(ブースター接種)を行った72人の血清中の中和抗体を測定し、オミクロン株やデルタ株に対する年齢ごとの抗体価の推移を解析したと発表した。この研究は、兵庫県と神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野の森康子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「medRxiv」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症()の流行を抑制するためワクチン接種が世界中で行われてきたが、一方で、さまざまな変異株ウイルスが発生し、感染力の上昇やワクチンに対する抵抗性が報告されている。日本ではデルタ株による第5波が2021年7~10月頃にかけて起こり、その後は一時的な小康状態であったものの、2021年末にオミクロン株の出現が報告されて以降感染は再度急拡大し、オミクロン株の流行による第6波が到来している。

ワクチンの2回接種を大半が終えている日本で再度感染拡大が起きている理由の一つとして、オミクロン株が持つスパイク(Spike; S)タンパク質の変異が挙げられる。現行のワクチンは抗原として従来株のスパイクタンパク質を利用しているが、オミクロン株のスパイクタンパク質上には30か所を超える変異があることが判明しており、ワクチンの効果が大きく減弱する可能性が懸念されている。これに対し、日本ではワクチンの3回目接種(ブースター接種)が始まったが、2回および3回のワクチン接種がオミクロン株に対してどれほど効果があるのか、また、ブースター接種の効果が年齢によって異なるのかなど、不明な点も多く残されている。

そこで研究グループは今回、2回および3回のワクチン接種により誘導されるオミクロン株に対する中和抗体を、他の変異株と比較し、またワクチン接種者の年齢別でも比較した。

2回接種の7か月後に6%の人がオミクロン株に対する中和抗体を保持、他の変異株よりも低値

新型コロナウイルスmRNAワクチン(Pfizer/BioNTech BNT162b2)の2回接種を完遂した神戸大学病院の医師 82人を対象として、ワクチン接種後約2か月の時点の中和抗体を測定。その結果、従来株とアルファ株に対しては全員が、デルタ株に対しては93%が中和抗体を持っていたが、オミクロン株に対しては28%しか中和抗体を持っていなかったと。さらに、オミクロン株に対する中和抗体価は、どの変異株と比較しても有意に低い値だったとしている。

若年者は高齢者に比べ抗体価が高い傾向にあるが、オミクロン株では若年者でも低値

また、38歳以下(若年)、39~58歳(中高年)、59歳以上(高齢)の3群間での比較では、59歳以上の群で中和抗体陽性率は低下する傾向があり、デルタ株では有意に抗体価も低下していた(陽性率:若年97%、高齢79%)。一方、オミクロン株では全ての年齢群で抗体陽性率が低く(若年32%、中高年31%、高齢16%)、抗体価に有意差は認められなかった。

ワクチン接種後7か月の時点ではさらに抗体価は低下し、デルタ株に対しては67%、オミクロン株に対しては全体のわずか6%しか中和抗体を持っていなかった。

ブースター接種後は、高齢者を含む全員がオミクロン株に対する中和抗体を獲得

しかし、3回目の接種(ブースター接種)を行った72人を対象として、、デルタ株および従来株に対する中和抗体を解析すると、驚くべきことに全員がオミクロン株を含めて全ての変異株に対して中和抗体を獲得していた。またオミクロン株に対する中和抗体価は、2回接種後2か月および7か月の時点の抗体価を遥かに超えており(それぞれ32倍および37倍上昇)、従来株やデルタ株に対しても同様の傾向が認められた。

ブースター接種の年齢別の比較では、59歳以上の高齢者も十分にブースター接種で中和抗体価が上昇しており(2回接種後7か月の時点の約27倍上昇)、高齢者でも効果が変わらないことが示された。

一方、ワクチン接種時の副反応は、発熱が1回目:0%、2回目:20%、3回目:33%、倦怠感が1回目:5%、2回目:17%、3回目:63%と上昇する傾向があり、接種部位の疼痛は1回目:89%、2回目:87%、3回目:90%と、変化はなかった。また、重大な副反応は認められなかった。

今後もワクチン接種者の中和抗体の経時的変化を評価することが必要

今回の研究により、ワクチンの2回接種はオミクロン株以外に対しては有効であるものの、オミクロン株の感染を防ぐには不十分であることが示された。一方、ブースター接種は年齢に関係なく、オミクロン株に対する中和抗体を上昇させることが示された。これは、ブースター接種により、従来株とオミクロン株が持つ共通のエピトープを認識する中和抗体が強く誘導されたことを示唆している。一方で、ブースター接種は発熱や倦怠感などの全身性の副反応の頻度が1、2回目の接種よりも増加する傾向があることも示された。

2022年1月以降、これまでにない速度で新型コロナウイルス感染者は増加し第6波が到来しているが、オミクロン株が中心であると考えられている。そのため、同研究結果は、オミクロン株が猛威を振るう現在、ブースター接種が感染を抑制させる鍵となることを示しており、副反応の懸念はあるものの、あらゆる年代の人に推奨されると考えられる。

一方で、ブースター接種により獲得された中和抗体の持続に関しては不明であり、新規の変異株が出現する可能性も懸念される。「引き続きCOVID-19の終息に向けて、ワクチン接種者の中和抗体の経時的変化を評価することが必要と考えられる」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか
  • 乳児股関節脱臼の予防運動が効果的だったと判明、ライフコース疫学で-九大ほか
  • 加齢黄斑変性の前駆病変、治療法確立につながる仕組みを明らかに-東大病院ほか
  • 遺伝性不整脈のモデルマウス樹立、新たにリアノジン受容体2変異を同定-筑波大ほか
  • 小児COVID-19、罹患後症状の発生率やリスク要因を明らかに-NCGMほか