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新型コロナワクチンの忌避、「情報収集に熱心な人」は接種控える傾向-東京医大

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2021年11月08日 AM11:00

「制約」「計算」など心理的要因5つと年齢・性の関連は?

東京医科大学は11月4日、新型コロナウイルスワクチン(以下、新型コロナワクチン)の予防接種を避けること(ワクチン忌避)につながる心理的要因を明らかにするため、2021年1月と4月に日本全国の20~79歳の男女3,000人を対象にインターネット調査を実施し、その結果を発表した。この研究は、同大公衆衛生学分野町田征己講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Human Vaccines& Immunotherapeutics」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

新型コロナワクチンの予防接種を躊躇あるいは拒否する、いわゆる「ワクチン忌避」が世界的な問題となっている。新型コロナワクチンの忌避については国内外でさまざまな研究が行われているが、これらの研究の多くが、ワクチンの効果や副反応に対する信頼を高めることと、新型コロナウイルスの危険性を理解してもらうことが接種率を高めるために重要であると報告している。

一方で、一般的にワクチン接種の意思決定は非常に複雑であり、ワクチンへの信頼や病気の危険性だけではなく、他のさまざまな心理的要因が影響することが指摘されている。ワクチン忌避に関連する心理的要因を包括的に説明したモデルの一つとして「5C psychological antecedents of vaccination(日本語訳:ワクチン接種の5つの心理的要因)」があり、ワクチン忌避に関連する心理的要因として以下の5要因が挙げられている。

「信頼(Confidence)」ワクチンの効果と安全性への信頼、制度や政策立案者への信頼。「自己満足(Complacency)」疾患の認識されている危険性。「制約(Constraints)」予防接種のアクセスのしづらさ、価格など。「計算(Calculation)」ワクチンに関する広範な情報検索への関与。「集団責任(Collective responsibility)」予防接種によって他者を守るという思い。

新型コロナワクチン忌避の要因をより詳細に明らかにするために、このモデルを新型コロナワクチンにもあてはめて検討することは有効と考えられるが、そのような研究は世界的にも極めて乏しい状況だ。また、ワクチン忌避者は若年者で多いなど、性別や年齢などによってワクチンへの考え方が大きく異なることが明らかになっている。よって、ワクチンの普及・啓発戦略を検討する上で、それぞれの性・年齢層にどのようなアプローチが有効かを個別に検討することが重要となる。

「制約(接種へのアクセスのしづらさ)」は男性のワクチン忌避と有意な関係

研究グループは、日本における新型コロナワクチン接種が開始される前と開始された後における一般市民の接種希望者割合の推移と、5つの心理的要因と新型コロナワクチン接種希望の関係を、性別・年代別に明らかにすることを目的に行った。

対象者から新型コロナワクチン接種希望について聴取し、「とても受けたいと思う」あるいは「やや受けたいと思う」の回答者をワクチン接種希望者、「あまり受けたいと思わない」「全く受けたいとは思わない」「わからない」と回答者をワクチン忌避者と定義した。2021年1月と4月に調査を行い接種希望者の割合を比較したところ、4月時点で接種を希望する人は全体としては増加傾向だったが、20歳代、30歳代では依然として60%程度だった。

5つの心理的要因の解析では、すべての年代において、「信頼(ワクチンの効果や安全性への信頼)」と「集団責任(予防接種によって他者を守るという思い)」が高いことはワクチン接種を希望することと関連を示した。「制約(接種へのアクセスのしづらさ)」は男性ではワクチン忌避と有意な関係を示したが、女性では関連は見られなかった。

一方、「計算(ワクチンに関する広範な情報検索への関与)」が高いことはすべての世代でワクチン忌避と関連していることが明らかになった。研究グループは、この結果について、個人が情報収集をすることで誤った情報や誤解を招く情報、否定的な情報に接する機会が増えるためかもしれないと推測。心理学的にも否定的な情報は、その情報量が少ない場合でも影響の大きいことが指摘されている。

ワクチン忌避者、情報収集により誤情報に接する機会が多い可能性

新型コロナワクチンの普及活動においては、ワクチンへの信頼を高めることや予防接種によって他者を守るという意思を高めることがすべての世代に効果的であり、男性ではさらに接種の利便性を高めることも効果的と考えられる。「ワクチン接種を控える人の中には、情報収集をすることで誤った情報や誤解を招く情報、否定的な情報に接する機会が多くなってしまっている人がいる可能性があり、この問題に対する対策を検討する必要がある」と、研究グループは述べている。

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