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ヘパラン硫酸がインスリンの働きを強め血糖値を下げることをマウスで確認-東北大ほか

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2021年08月20日 AM10:45

白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の役割については不明だった

東北大学は8月19日、白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の血糖値調節に対する機能を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科機能薬理学分野の吉川雄朗准教授、松澤拓郎博士研究員らのグループと、同研究科環境医学分野守田匡伸講師およびSanford-Burnham-Prebys Medical Discovery Instituteの山口祐教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

ヘパラン硫酸は細胞の表面に存在している糖鎖の一つ。白色脂肪細胞は血糖値の調節において非常に大切な細胞だが、この細胞におけるヘパラン硫酸の役割については不明のままだった。そこで研究グループは今回、白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の機能解析を行った。

ヘパラン硫酸は白色脂肪細胞の機能を向上させ、インスリンの働きを強め、血糖値を下げる

研究ではまず、ヘパラン硫酸が減少した白色脂肪細胞株(3T3-L1細胞)を作製し解析した。その結果、ヘパラン硫酸が減ると脂肪細胞が十分に分化せず、インスリンによるブドウ糖取り込み能が減少することが示された。したがって、3T3-L1細胞のブドウ糖取り込み能を維持するためには、ヘパラン硫酸が必要だと考えられた。また、そのメカニズムとして、ヘパラン硫酸がBMPやFGFといった成長因子の作用を強めることが示唆された。

次に、白色脂肪組織でヘパラン硫酸が減少したマウスを遺伝子組換え技術を用いて作製し、インスリンの働きと血糖値について検討した。このマウスではインスリンが効きづらくなり、その結果、血糖値が高くなることが示された。以上のことから、ヘパラン硫酸は白色脂肪細胞の機能を向上させ、インスリンの働きを強め、血糖値を下げる役割があることが明らかとなった。

糖尿病の病態解明やヘパラン硫酸を標的とした治療薬開発に期待

今回の研究により、白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の血糖値調節に対する機能が明らかになった。「今後、この研究成果を糖尿病の病態解明や治療薬の開発へとつなげていきたいと考えている。また今回の発見により、ヘパラン硫酸についての理解が一層進むことも期待される」と、研究グループは述べている。

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