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川崎病の発症リスク、妊娠中期以降の葉酸サプリ摂取で低減の可能性-横浜市大ほか

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2021年07月21日 AM11:45

年々患者数が増加するも原因が解明されていない「

国立成育医療研究センターは7月20日、川崎病を発症した343人と未発症の参加児を比較した結果、妊娠中期から後期の葉酸サプリメント摂取が川崎病の発症リスクを減らし、逆に母親の甲状腺疾患の既往歴や、参加児の兄弟・姉妹の存在が発症リスクを増やす可能性があることが明らかになったと発表した。この研究は、横浜市立大学小児科の伊藤秀一主任教授、国立成育医療研究センターデータサイエンス部門の小林徹部門長らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Research」に掲載されている。


画像はリリースより

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010年度より全国で10万組の親子を対象に開始された、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。母体血や臍帯血、母乳等の生体試料を採取保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにすることとしている。

エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省とともに各関係機関が協働して実施している。

川崎病は1967年に小児科医の川崎富作博士により報告された疾患。主に乳幼児に発症し、全身の血管に炎症が生じ、ときには心臓の冠動脈に動脈瘤の後遺症が発生することもある。日本では急激な少子化にもかかわらず年々患者数は増え、1年間に約1万6,000人もの新規患者が発生し、乳幼児の100人に1人が罹患すると推定されている。幸い、治療の進歩にともない、心臓に後遺症が残る患者は減少しているが、その原因は全く解明されていない。

母親の甲状腺疾患の既往歴と、生まれた子どもの兄弟・姉妹の存在が発症リスクを増加させる可能性

今回、エコチル調査のデータを用いて、胎児期から周産期のさまざまな因子が、1歳までの川崎病発症に影響を及ぼすかについて検討した。世界で最も患者数が多い日本でしか実現できない研究だ。

エコチル調査に登録された妊婦から生まれた10万4,062人の子どものうち、流産、死産、協力取りやめなどにより対象とならなかった者を除いた9万486人が本調査の対象となった。このうち、343人が1歳までに川崎病を発症した。9万486人の対象者について、川崎病発症の有無と母親の妊娠中の甲状腺疾患や糖尿病などの既往歴、妊娠後期の栄養状態や食事内容、妊娠中の葉酸・亜鉛などの摂取状況、母親の喫煙歴、両親のアレルギー疾患や川崎病の既往歴、出産方法(帝王切開など)、出産週数、生まれた子どもの新生児黄疸や兄弟・姉妹の有無などさまざまな因子についての関係を解析した。

その結果、妊娠中期から後期の葉酸サプリメントの摂取が、生まれた子どもの1歳までの川崎病の発症リスクを減らす可能性が示された。一方、母親の甲状腺疾患の既往歴と、生まれた子どもの兄弟・姉妹の存在が、発症リスクを増加させる可能性が示された。今回の研究で最も注目すべき発見は、妊娠中期から後期のサプリメントによる葉酸補給と生まれた子どもの川崎病の発症リスクとの関連だ。妊娠前から妊娠初期の食事やサプリメントによる葉酸補給は、胎児の神経管閉鎖障害の予防効果のエビデンスがあり、推奨されている。今回の結果は、妊娠中期から後期の葉酸サプリメントによる葉酸補給の新たなメリットを示す可能性がある。

妊娠中期~後期の血中葉酸濃度と生まれた子どもの1歳までの川崎病の発症についての解析などを実施予定

生まれた子どもの兄弟・姉妹の存在が乳幼児期の川崎病発症に影響を与えていることも、今回明らかになった。川崎病の一部は感染症を契機として発症する可能性があり、兄弟・姉妹の存在は感染症へのばく露機会を増やす可能性がある。しかし、兄弟・姉妹の存在が川崎病発症に関連する具体的な要因については、今後のさらなる検討が必要だ。さらに、母体の自己免疫疾患が子どもの川崎病発症リスクとなるという報告もあり、今回の研究では、特に母体の甲状腺疾患との関連が示唆された。だが、今回の研究においては甲状腺疾患を有する母親は少数であるため、その解釈には慎重であるべきであり、さらなる多数例での検討や別の方法を用いた研究などが必要と考えられる。

同研究では、生まれた子どもの1歳までに発症した川崎病を対象として研究を行った。現在、その年齢を3歳までの発症に拡大し、同様の解析を行っている。今回明らかになった、妊娠中期~後期の葉酸サプリメント摂取の欠如、母親の甲状腺疾患の既往歴、生まれた子どもの兄弟・姉妹の存在も含めた項目について解析中だという。

「将来的には、6歳までの解析を予定している。また、母体の妊娠中期~後期における血中葉酸濃度と生まれた子どもの1歳までの川崎病の発症についての詳細な解析を実施し、今回の結果について異なった観点からも解析している。類似研究として、母体の重金属や化学物質の影響についても検討中だ」と、研究グループは述べている。

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