医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 4K-3Dビデオ顕微鏡による新規手術法の有用性をブタで確認-金沢大ほか

4K-3Dビデオ顕微鏡による新規手術法の有用性をブタで確認-金沢大ほか

読了時間:約 2分53秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年06月15日 PM12:15

肉眼~顕微鏡レベルまで、超高画質の画面を見ながら行う新規手術法「MMBS」

金沢大学は6月11日、「手術用の高精細(4K)3Dビデオ蛍光顕微鏡(HawkSight)」を使った新しい手術法の有用性をブタモデルで検証し世界に提唱したと発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系肝胆膵・移植外科学の八木真太郎教授ら、、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

従来の外科用ルーペや顕微鏡を用いた手術の術者は、重いルーペを頭部に装着し、顕微鏡のレンズを長時間にわたって覗く姿勢を強いられる。それは、首や腕のしびれの原因となり、手術の質を低下させていることがあった。また、従来の手術では、術者が見ているものと同じ視野を助手や見学者が共有することができないため、技術を伝承する妨げとなっている。

研究グループは、)の医工連携事業化推進事業の資金援助を受け、マイクロからマクロまでボーダレスに手術を行える4K-3Dビデオ蛍光顕微鏡による、肉眼レベルから顕微鏡レベルまで境目なく超高画質の画面を見ながら行う新しい手術法「マイクロ・マクロボーダレス手術(Micro- and Macro-Borderless Surgery:MMBS)」を提唱。同装置の有用性を、動物実験にて検討した。

血管吻合の出来具合・所用時間、外科用ルーペを用いた場合と同様の結果に

(1)現在の手術で使用している外科用ルーペ、(2)新しい装置を用いて3Dモニターを見ながら頭を上げた状態で行う新しい手術方法(MMBS)の2種類の手術をそれぞれ実施し、MMBSが従来の方法(1)に比べて劣っていないかを確認した。

まず、ブタを全身麻酔下に開腹して、腹部の血管の吻合を動脈(直径3.5mm)と門脈(直径10mm)に対して実施。また、膵臓周囲の剥離、並びに膵臓と腸を吻合する吻合操作を行い、(1)と(2)を比較した。

MMBSはカメラヘッドを術野から100cm離した状態で、拡大率は37倍まで拡大することができ、焦点深度は約5mmと十分深い。そのため、カメラヘッドが視野の邪魔になることなく大きなワーキングスペースを作ることができ、心拍や呼吸性変動の影響を受けることなく全ての操作を行うことができた。血管吻合の出来具合や所用時間は外科用ルーペを用いた場合と同様だった。

MMBSにおいては、手術している部位を術者と助手が同一モニターを見ながら、頭を上げた状態で楽な姿勢で手術を行うことができることや、レンズの倍率を速やかに調整することができ、弱拡大から強拡大の視野まで速やかに対応することができることから、今まで外科用ルーペを用いて行なっていた手技は従来の方法と遜色なく行うことができたという。

腹部・胸部血管外科手術にも対応可能

続いて、従来は高拡大率のルーペや顕微鏡を用いて行っていた胸部並びに腹部の細い血管(直径1.5mm)の吻合を、ブタ体内にてMMBSで実施。胸部手術では心臓バイパス手術で使用している内経動脈の吻合、腹部においては左肝動脈の吻合を行った。

結果、全ての血管をMMBSで吻合することを確認。吻合後の血管内や組織の血流を、蛍光色素ICGによりモニター上でオーバーレイすることにより確認したという。腹部および胸部血管外科手術にも対応可能であることを示すことができた。

肝移植、血管内カテーテル挿入などもMMBSにて実施

最後に、ブタを用いて、同装置を用いた新しい肝移植方法を試行。移植する肝グラフトをドナーの体内で採取直後からカテーテルを挿入して、体外で温かい血液を用いて移植直前まで灌流することにより、移植肝の状態を改善させる方法だ。

血管内へカテーテルを入れる、血管をつなぎ合わせるといった操作も含めて、全てMMBSにて実施したという。灌流中においても、移植肝の組織血流をICGにより確認することができた。

外科医の身体的負担軽減、外科手術の安全性向上への貢献に期待

今回、術野を直接見るために首を傾けて使う外科ルーペや従来型の顕微鏡の代わりに開発した、新しい装置を使用したMMBSにより、種々の手術操作を安全に行うことを確認した。

MMBSによる手術方法は首を伸ばした状態でモニターを見ながら行うことができるため、手術時の外科医の身体的負担の軽減が期待される。また、同一のモニターによって皆で手術操作を確認することができるため、外科技術の伝承・教育に有用だという。さらに、血流や腫瘍の正確な位置を確認しながら手術を行うことができるため、外科手術自体の安全性の向上に貢献することが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか
  • 心臓手術後のリハビリや予後にプレフレイルが及ぼす影響を解明-兵庫県立はり姫ほか
  • 糖尿病性神経障害、発症に細胞外基質のコンドロイチン硫酸が重要と判明-新潟大ほか
  • 「リウマチ・潰瘍性大腸炎」治療薬の薬疹リスクアレルを発見-理研ほか