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てんかん、日本人の発症に関連する新規遺伝子領域を同定-名古屋市立大ほか

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2021年05月06日 AM11:15

日本人てんかん患者ゲノムDNAでGWAS実施、発症に関わる遺伝的リスクを同定

名古屋市立大学は4月29日 、日本人てんかん患者のゲノムDNAを用いて全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、てんかん発症に関わる新規の遺伝子領域を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 脳神経科学研究所 神経発達症遺伝学分野の山川和弘教授、鈴木俊光講師、(理研)生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー、小池良直研修生(北海道大学大学院)、理研生命医科学研究センター 基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、久保充明チームリーダー(研究当時)、芦川享大テクニカルスタッフ(研究当時)、東京大学大学院新領域創成科学研究科 複雑形質ゲノム解析分野の鎌谷洋一郎教授らを主体とする研究グループによるもの。研究成果は、「Epilepsia」に掲載されている。


画像はリリースより

てんかんは、脳内の神経細胞の過剰な興奮(神経活動)により繰り返し起こるてんかん発作を特徴とし、全人口のおよそ1%に見られる頻度の高い慢性的な神経疾患。これまでに、てんかん発症の原因となる責任遺伝子も多数同定されている。また、一卵性双生児での一致率をさまざまな疾患で調べた研究では、特発性てんかんが統合失調症や双極性障害(躁うつ病)など他の疾患を抑え、80%を超える最大の一致率を示しており、これらは、てんかんにおいて遺伝的背景の寄与が非常に大きいことを明確に示している。

現在までに、欧州ではてんかん発症リスクと関連する遺伝子を探索する大規模GWASが共同研究ベースで実施されてきたが、日本人においては充分な検討がなされていなかった。そこで今回、研究グループは、日本人てんかん患者のゲノムDNAを用いてGWASを行い、日本人におけるてんかん発症に関わる遺伝的リスクの同定を試みた。

山川教授らの研究グループは、日本最大級の疾患バイオバンクであるバイオバンク・ジャパン(BBJ)で収集されたさまざまな種類のてんかん患者1,825人(442人の特発性全般てんかん、666人の症候性てんかん、717人の未分類のてんかん)を含む約1万人の全ゲノムインピュテーションを行い、得られたヒトゲノム全体をカバーする約1000万か所の一塩基多型(SNP)とてんかんとの関連を解析した。

てんかん発症に関わる新規の遺伝子領域、12番染色体長腕から同定

解析の結果、全ゲノム関連解析の有意水準(P<5.0×10-8)を満たす11個のSNPを含むてんかん発症に関わる新規の遺伝子領域を、12番染色体長腕(12q24)から同定した。これら11個のSNPは、以前の欧州人や中国人のてんかん患者を用いたGWASでは報告のない新規SNPだったという。

次に、今回てんかんと関連を示した11個のSNPのアレル頻度を集団間で比較したところ、これらのSNPは東アジア系集団(日本人、中国人、ベトナム人)では多型性を示したが、東アジア系集団以外(欧州系、アフリカ系など)では単型性または非常に小さな多型性を示した。このことは、今回同定されたてんかんと関連を示すSNPを用いても、東アジア系集団以外の集団ではてんかんとの関連を検出することが困難であり、これが今回見出した領域が以前の欧米人患者を用いたGWASでは検出されなかった理由であることを示唆している。

今回同定された遺伝子領域には、24個の遺伝子が位置している。脳での発現が確認されている遺伝子のうち、BRAP遺伝子は統合失調症の責任遺伝子の候補として報告があり、また神経伝達に関与するタンパク質をコードするRPH3A遺伝子の変異が学習障害や運動失調症などの患者で見つかっている。また、SNPsと遺伝子の発現量との関連をみる解析によっても、これらBRAP、RPH3Aなどが関連遺伝子候補として見出された。

加えて、神経細胞の樹状突起分枝やシナプス形成に関わる転写因子をコードするCUX2遺伝子の同一ヘテロ接合性新生変異(p.E590K)が発症率の低い稀なてんかん性脳症の少数の患者で同定されている。これら遺伝子の変異(多型)が広くてんかん発症に関わる可能性もあり、今後これらの候補遺伝子について、さらなる解析が求められるとしている。

てんかん新規治療法や発症予防法開発に貢献の可能性

今回の研究成果により、てんかん発症との関連が明らかとなった遺伝子領域内の原因遺伝子を同定し、その変異を介した発症メカニズムを解明することで、てんかんに対する新しい治療法や発症予防法の開発に貢献できる可能性がある。

さらに、患者への遺伝カウンセリングにおいて科学的根拠に基づいて説明すること、医療の現場での遺伝子検査の実施により、患者個人に対応した適切な治療の方針を立てることが可能となり、副作用の軽減や無駄な医療費の削減に貢献することが期待できる、と研究グループは述べている。

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