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細菌「レプトスピラ」が臓器を壊して感染する仕組みを解明-琉球大ほか

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2021年04月27日 AM11:45

人獣共通感染症レプトスピラが標的臓器にたどり着く仕組みは?

琉球大学は4月23日、レプトスピラ症を引き起こす細菌「」が感染するときに細胞をシールする装置を壊すことを明らかにし、その破壊を阻止することにも成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科(細菌学講座、分子解剖学講座)のトーマ・クラウディア准教授・大倉信彦助教、東北大学の中村修一助教、(OIST)のブルーノ・ホンベル博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cellular Microbiology」に掲載されている。


画像はリリースより

レプトスピラ症は熱帯・亜熱帯地域に多く見られる人獣共通感染症の一種。感染症法で届出対象とされているが、その臨床症状には発熱や筋肉痛など軽症型から黄疸・出血症状・多臓器不全などを伴う重症型まで多様性があるため、確定診断が難しい感染症として知られている。初診が遅れ重症化すると、死に至ることもある。沖縄県での患者発生は他県に比べ多く(届出件数の半数が沖縄)、河川でのレジャーによる集団感染の報告も多数ある。レプトスピラ症の治療としては、抗菌薬による早期治療が効果的だが、抗菌薬の投与による副作用などが問題となっており、新たな治療法の開発が求められている。

レプトスピラ症の原因細菌であるレプトスピラは、皮膚・粘膜から血流に入り、肺や腎臓などの標的臓器へと拡がる。一方、皮膚や臓器にはもともと細胞間接着装置(接着装置)があり、隣り合う細胞同士を密着させることで、臓器の構造と感染阻止を含む生理機能を維持している。接着装置は、カドヘリンを中心分子とする接着帯と閉鎖帯から構成されている。さらに、閉鎖帯は、細胞膜に存在するタンパク質(オクルディン)と細胞内裏打ちタンパク質などから構成されている。病原細菌はさまざまな戦術を駆使して、これらのタンパク質の機能を撹乱し、感染を成立させる。レプトスピラの場合は、細胞間隙を通過しながら肝臓・肺・腎臓などの標的臓器にたどり着くことが動物感染モデルを用いた研究で示唆されていたが、その仕組みは未解明のままだった。

レプトスピラが細胞をシールする装置を壊して侵入することを解明、破壊の阻止にも成功

レプトスピラがどのように標的臓器にたどり着くかを理解することは、レプトスピラ症の重症化と本菌の全身への広がりを遮断するために重要だ。そこで研究グループは、近位尿細管上皮細胞(renal proximal tubular cells, RPTEC)を安定した経上皮抵抗値を示す細胞として分化させた実験系を立ち上げた。これを用いて、レプトスピラを基底側から感染させ、FIB-SEMトモグラフィ法で感染の現場をスナップショットで捉えることに成功。24時間後には、多数のレプトスピラが細胞間隙に存在することを明らかにした。さらに、レプトスピラの動態を理解するために、継時的にビデオ顕微鏡によるモニタリングや上皮細胞の構造と抵抗値などを解析。その結果、レプトスピラの細胞への付着上昇に伴い、抵抗値が低下することが判明した。また、低い抵抗値を示す細胞では、カドヘリンとオクルディンの膜タンパク質の局在の著しい変化が誘導された。これらの結果により、レプトスピラは接着装置を破壊し、細胞間隙を通過しながら上皮細胞の頂端側へと移行することが明らかになった。

次に、レプトスピラの接着装置破壊機構を明らかにするために、さまざまな阻害を用いた感染実験を実施。その中で、カドヘリンの細胞内取り込みを阻害するPitstop2を用いた感染実験では、レプトスピラによる接着装置の破壊と、レプトスピラの頂端側への移行を阻止することができた。この結果から、レプトスピラによる細胞間接着装置の破壊は、その接着に重要な細胞外領域をもつカドヘリンを細胞内に取り込むことで引き起こされることがわかった。

レプトスピラの新たな制御法開発につながることに期待

体内に侵入したレプトスピラは、コルク栓抜きのような形状で運動しながら組織内を移動すると考えられている。レプトスピラは、発熱後7日間程度血液中に存在するが、10日前後でレプトスピラに対する抗体が産生されるため菌は排除される。しかし、菌は腎臓の近位尿細管に留まって長期にわたり尿中へと排出される。これまでは菌がどのように全身へと移行するかが理解されていなかった。

しかし、今回の研究で用いた実験系で、動物感染モデルと同様、レプトスピラが細胞間隙を移動することが初めてin vitroで再現され、レプトスピラがカドヘリンの細胞内取り込みを誘導し、細胞間接着装置を破壊することが明らかにされた。これにより、カドヘリンの細胞内取り込みを阻害することによって、レプトスピラの全身への広がりを食い止められることが示唆された。「本研究で得られた新規知見は、レプトスピラ症の病態形成メカニズムの理解に寄与し、新たな制御法の開発につながることが期待できる」と、研究グループは述べている。

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