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柿タンニンの摂取で、潰瘍性大腸炎モデルマウスの病態が改善-奈良医大ほか

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2021年04月05日 AM11:00

指定難病の中で最多患者数の潰瘍性大腸炎

奈良県立医科大学は4月2日、柿より高純度に抽出した柿タンニン()が、潰瘍性大腸炎で増加する腸内の悪玉菌の増殖と炎症反応を抑え、潰瘍性大腸炎の病態を改善できることを動物モデルにて実証したと発表した。この研究は、同大免疫学講座の伊藤利洋教授、畿央大学健康科学部の栢野新市教授、松村羊子教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

潰瘍性大腸炎は、消化管に慢性炎症を引き起こす原因不明の疾患で、寛解と再燃を繰り返すことが知られている。近年、患者数が増加しており、国内で約20万人、欧米で約200万人の患者がいると推定されている。根治する治療法は確立されておらず、一般的には症状改善のために薬物による内科的治療が行われるが、薬物療法が効かない場合もある。厚生労働省指定難病にも指定されており、患者数は指定難病の中では最多で、新規予防法・治療薬の開発が望まれている。

大腸環境で発酵され抗酸化活性を示す柿タンニン、潰瘍性大腸炎を抑制できるか?

腸内には500~1,000種類、約100兆個の腸内細菌が共生しており、腸内の細菌は食物の代謝、吸収だけでなく、腸内の免疫系を制御していることが明らかとなってきており、腸内細菌叢の構成異常「dysbiosis」が免疫系の活性化と抑制のバランスを崩し、潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患の発症を引き起こすと考えられてきた。

タンニンは、植物に含まれるポリフェノールの一種で、柿、お茶、ぶどうなどに多く含まれる、渋みのもととなる成分。柿から抽出されたタンニンは、古くから柿渋として、革や衣服の防虫、防水や染色に利用されてきたが、近年、柿タンニンは抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、抗酸化作用などの多様な作用を持つことが明らかとなってきており、さまざまな疾患への応用が期待されている。

伊藤教授らの研究グループは多様な活性を持つ柿タンニンに着目し、柿より高純度に抽出した柿タンニン(柿渋)が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して不活化効果を有することを2020年に発表している。また、柿タンニンは非結核性抗酸菌に対する抗菌作用やマクロファージの活性化を抑制する作用をもち、柿タンニンを含有する餌をマウスに摂取させることで、非結核性抗酸菌感染による肺炎が改善することを明らかにしている。さらに、柿タンニンは大腸の環境で発酵され抗酸化活性を示すことから、潰瘍性大腸炎のような大腸の炎症を柿タンニンが抑制するのではないかとの着想に至ったという。

柿タンニンが、モデルマウスで腸内細菌の乱れや免疫細胞の活性化を抑えると示唆

研究グループは今回、柿果実より高純度に抽出した柿タンニン(柿渋)を含有する餌をマウスに摂取させることで、デキストラン硫酸ナトリウムの投与によって誘発される大腸炎(潰瘍性大腸炎モデル)の疾患活動性ならびに炎症を軽減できることを見出した。

このメカニズムとして、柿タンニンは潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患患者に見られる、いわゆる悪玉菌(Enterobacteriaceae科の細菌群)の増加や、腸内細菌叢のdysbiosisを抑えること、さらに免疫細胞の活性化を抑えることが示唆された。「本成果から、潰瘍性大腸炎の予防・治療や寛解維持への柿渋の応用が期待される」と、研究グループは、述べている。

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