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複合性局所疼痛症候群、影絵を用いた介入でアロディニア軽減し歩行改善-畿央大ほか

読了時間:約 1分40秒
2020年10月27日 AM11:15

足部の外傷後にCRPSとなった症例に、影絵を用いた介入を実践

畿央大学は10月23日、痛みへの恐怖心を持つ複合性局所疼痛症候群(Complex Regional pain Syndrome: )の患者に対し、「」による新たな治療方法を考案し、有効性が認められた症例を報告したことを発表した。この報告は、同大大学院博士後期課程の修了生 平川善之氏(現:福岡リハビリテーション病院・リハビリテーション部長)が、同大ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡周教授、大阪河崎リハビリテーション大学の今井亮太助教らと共同で行ったもの。報告は、「Brain Science」に掲載されている。


画像はリリースより

CRPSは、捻挫や打撲、骨折など四肢の障害後に痛みが遷延化する疾患。足部など下肢のCRPS患者では、痛みへの恐怖心から、足に体重をのせて歩くことができなくなる。今回報告した症例は、足部の外傷後にCRPSとなり、足部の強い痛みとともに膝関節から足部まで強いアロディニアがあり、身体所有感や身体イメージの欠如が認められた。そこで、研究グループは、痛みを予期させずに足部で荷重するイメージを形成させる新たな介入方法として、「影絵を用いた介入」を実践した。

影絵上で触れている錯覚を生じさせ、アロディニア軽減に成功

具体的には、実際の症例には触れない状況で影絵上のみで触れている錯覚を生じさせた。これにより身体所有感と身体イメージが再形成され、アロディニアの軽減が認められた。しかし、患部で荷重することへの予測的な痛みから歩行能力の改善に至らなかった。そこで、症例とシーツで隔てた環境で第3者の足部の影絵を作成し、その第3者の影絵が自身の影絵であると錯覚を生じさせ、その影絵をセラピストが触れる事で自身の足部を触れられているような錯覚を生じさせた。これにより足部のアロディニアが軽減し、自身の足部で第3者の影絵に触れることができるようになった。こうして、影絵を用いた介入以降、身体イメージの改善に伴って歩行能力の向上が認められた。

CRPS患者の痛みには、身体認知能力や心理要因などが影響する。特に足部など下肢のCRPS患者では、痛みが予測されることで荷重困難となる。今回報告した「影絵」を用いた新たな臨床介入を用いることで、身体認知能力を向上させるとともに、荷重に対する予測的な痛みを生じさせることなく、荷重のイメージを想起させることが可能となった。研究グループは、「今後は、影絵を用いた介入の適応患者の特徴を整理し、その適応範囲を検討するなど、より詳細な検証作業が必要になると考えられる」と、述べている。

 

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