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ALSを含む認知症の一群・FTLD類縁疾患で共通の分子メカニズムを発見-名大ほか

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2020年08月20日 PM12:30

FTLDとALS/PSPなどの疾患との共通点、剖検脳で検討

名古屋大学は8月7日、認知症の1つである前頭側頭葉変性症()と、(ALS)、進行性核上性まひ()、大脳皮質基底核変性症()など、認知症の一群()に共通する分子メカニズムを発見したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科の石垣診祐特任准教授と祖父江元特任教授(愛知医科大学理事長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Brain」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

FTLDは、人格変化、情動異常、言語障害などを特徴とする認知症の1つであり、若年性認知症の中では2割近くの割合を示すとも言われる。高度の性格変化や社会性の喪失、時には軽犯罪などを認めるために、とりわけ家庭や職場などで社会的な問題を引き起こすことがしばしばあり問題になることがある。遺伝学的、病理学的側面よりFTLDはALSと疾患スペクトラムを形成することが知られている一方で、4R-タウの蓄積を特徴とするタウオパチーとして、PSPやCBDともスペクトラムを形成すると考えられている。しかし、病態のメカニズムについてはほとんどが不明であり、根治療法も存在しないため、分子的基盤の解明は喫緊の課題となっている。

研究グループはこれまでに、RNA結合タンパク質であるFUS(fused in sarcoma)が核内で高分子複合体を形成し、別のRNA結合タンパク質であるSFPQ(splicing factor、proline- and glutamine-rich)と結合すること、FUSとSFPQはどちらも選択的スプライシングを通じてタウアイソフォームのバランス変化を制御すること、さらには、FUSおよびSFPQの機能喪失マウスモデルは情動の異常を中心とするFTLD様の高次機能障害を呈することなどを報告している。今回、この知見を発展させ、剖検脳を用いた病理学的解析を行った。

ALS/FTLD/PSP/CBDの核内でFUSとSFPQの会合異常、タウアイソフォームの異常

剖検脳142例を、海馬および前頭葉の神経細胞の核内におけるFUSとSFPQの微小局在と両者の結合について疾患横断的に病理組織学的、生化学的手法を用いて解析した。その結果、家族性および孤発性の ALS、FTLD(TDP-43もしくはFUS封入体陽性)、PSP、CBDといった広義 FTLD 疾患スペクトラムにおいて、FUSとSFPQの会合異常が、前頭葉、海馬の神経細胞で確認された。また、FUSとSFPQが制御するMAPT遺伝子の選択的スプライシングの産生物であるタウアイソフォームのバランス異常も確認された。

一方、アルツハイマー病およびピック病ではこうした変化が確認されなかった。また、これまで病理学的な指標とされてきた細胞質封入体(FUS、TDP-43 およびリン酸化タウなどの蓄積)との相関については、統計学的に有意な関連性はなかった。

FUSとSFPQの機能喪失に伴うタウアイソフォームの変化を標的とした核酸医薬等の開発に期待

これまで指標とされてきた封入体を基準にした病理学的な解析では、ALSと臨床的・遺伝学的・病理学的に連続するFTLDの疾患グループと、タウに関連するFTLDのグループに共通する分子メカニズムは明らにされてこなかった。しかし、今回の研究結果は、FTLDのみならずALS、PSP、CBDも含む幅広い「FTLD疾患スペクトラム」における共通の分子メカニズムとしてFUSとSFPQの会合異常とタウアイソフォーム変化が存在することを示唆した。

「以前のマウス実験で、タウアイソフォームの変化(4R-タウ/3R-タウ比)を正常に近づけるレスキュー実験を行ったところFTLDの症状が回復することから、FUSとSFPQの機能喪失とそれに伴うタウアイソフォームの変化を標的とした治療が、こうした神経変性疾患に広く応用できる可能性がある。今後の展開として核酸医薬などによる根本治療法の開発が期待される」と、研究グループは述べている。

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