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膵臓がんの前がん病変のがん化を妨げるタンパク質が判明-名大

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2018年06月21日 PM12:15

既存の抗がん剤治療では平均生存期間が1年未満の膵臓がん

名古屋大学は6月18日、細胞外分泌型タンパク質のTFF1が、膵臓がんの発生に大きく関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科腫瘍外科学の梛野正人教授と、山口淳平助教らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」オンライン速報版で掲載された。


画像はリリースより

膵臓がんは、5年生存率が10%程度の難治性悪性腫瘍。良性腫瘍が悪性化することで発生すると考えられているが、その発がんメカニズムは解明されていない。進行性膵臓がんに対する治療については、近年の化学療法の発展により、FOLFIRINOX、ジェムシタビン+nabパクリタキセルなど有効な抗がん剤治療法が開発されているが、いずれも平均生存期間は1年未満と満足な結果とはいえなかった。

消化管の粘膜の再生促進、抗がん作用も指摘されるTFF1

今回研究グループでは、胃粘膜で豊富に生産される分泌型タンパク質のTFF1(Trefoil Factor Family1)に着目。TFF1は、胃潰瘍などの消化管の粘膜の再生を促進していることが明らかにされてきており、合わせて、抗がん作用を有することも指摘されている。一般に、膵臓がんではKRASなどのがん遺伝子変異が起きると良性腫瘍が発生し、これを長期間放置すると増殖・浸潤・転移する能力を獲得してがんになると考えられている。

研究グループが膵臓がんにおけるTFF1の作用を確認したところ、TFF1は膵臓がん細胞の上皮間葉転換(EMT)を抑制し、膵臓がんの浸潤・転移する能力を弱めることが判明した。また、遺伝子改変マウスを用いてTFF1と膵がん発生の関係を調べたところ、TFF1は膵がんの良性腫瘍であるPanINが悪性度を増してがん化することを妨げていることがわかったという。

今回の研究の結果により、TFF1が膵がんの前がん病変のPanINやIPMNが浸潤性膵がんに変化するのを妨げていることが判明した。TFF1の抗がん作用を応用すれば、膵臓がんの発生を抑止する予防的治療の開発につながる可能性があり、同時に進行性膵臓がんに対する新たな治療法を開発できる可能性がある、と研究グループは述べている。

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