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バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域を発見-東大ら

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2018年06月05日 AM11:00

1万1,348人の遺伝子情報とアンケートの結果

東京大学は5月31日、約54万SNPの遺伝子情報と体質に関するWEBアンケートの結果を用いて、大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域をそれぞれ発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科産婦人科学講座大須賀穣教授らと、株式会社スタージェン鎌谷直之氏らのグループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。

研究グループは、株式会社エム ティーアイの子会社である株式会社エバージーンの遺伝子解析サービスのプラットフォームを利用し、エムティーアイが運営する「ルナルナ」ユーザーの女性ボランティアが自宅で採取した唾液より抽出したDNAから約60万SNPの遺伝子情報を読み取り、その中から精度の高い検体およびSNPのみを抽出。1万1,348人、約54万SNPの遺伝子情報と女性ボランティア自身が回答した体質に関するWEBアンケートの結果を用いて、GWASを行い、バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域を探索した。

月経中の発熱、OPRM1に特徴的な遺伝型の組み合わせ

アンケートでバストのカップ数(AA~Gカップ以上)について質問し、その回答をもとに、バストサイズの傾向を数値化して解析を実施。その結果、バストサイズが大きい傾向の人と小さい傾向の人とで異なる遺伝型の組み合わせが、6番染色体のCCDC170と、8番染色体のKCNU1/ZNF703と呼ばれる遺伝子領域に存在することが明らかになった。CCDC170は、乳がんの発症リスクとも関連が強いことが報告されており、エストロゲン受容体をコードしているESR1遺伝子と隣接している。今回、実際の遺伝子発現に与える効果を検討したところ、これらの遺伝子変動がESR1の発現量よりもCCDC170の発現量に関連することが確認されたという。


画像はリリースより

また、月経痛の重い傾向の人と軽い傾向の人とで異なる遺伝型の組み合わせが、1番染色体のNGFおよび2番染色体のIL1Aと呼ばれる遺伝子領域に存在することが判明。さらに、アンケートで月経中にある症状として「発熱」を選んだ人には、6番染色体のOPRM1と呼ばれる遺伝子領域に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することが明らかになった。

これらの遺伝子多型が、実際の遺伝子の発現に与える量的効果をeQTLと言う。eQTL解析を行うことで、遺伝子多型と疾患発症や体質の関連を検討できると考えられている。今回のGWASで得られた成果と最近のGTEx PortalのデータセットでのeQTLの共局在解析を行うことで、研究グループの同定したSNPsが、実際にタンパク発現をコードする遺伝子の発現やロングコーディングRNAの発現に関連することがわかったという。

研究グループは今後、今回の研究結果をもとに、さらなる研究を進め、個人の体質に合わせた月経中の痛みや発熱などの改善の取り組み、子宮内膜症、乳がんなどの女性特有の疾患と体質の関連について解析し、一人ひとりに合った情報やアドバイスの提供、予防法の選択が可能になることが期待される、と述べている。

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