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京大、高安病関連遺伝子を発見

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2013年07月06日 PM12:13

発症、合併症頻度や重篤度に関連

京都大学(京都府京都市)は7月4日、同医学研究科附属ゲノム医学研究センター寺尾知可史特任助教らの研究グループが、高安病の関連遺伝子二つを発見したと発表した。

(画像はwikiメディアより引用)
研究成果は、The American Journal of Human Genetics電子版に掲載されている。

本邦で見出された高安病

高安病とは、20世紀初頭に高安右人教授により初めて報告された自己免疫疾患で、若年女性に発症、大動脈およびその主要分枝における動脈の炎症を主体とする全身性血管炎である。動脈の狭窄や拡張が起き、脈なし病とも呼ばれ、特定疾患に定められている。日本に最も患者が多く、約5,000人と推定されている。インドや中国等のアジア諸国にも多いが、その他の地域では患者が少ない。

発熱や倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身症状に加え、動脈炎による頭痛、めまい、失神や視力障害などがあり、脈拍の消失・減弱が特徴的である。左右で血圧差が生じ、心臓弁膜症や肺梗塞、失明、脳出血等の合併症もある。副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤で治療され、病態が落ち着くこともあるが、治療がうまく進まないケースも多い。

SNPアレイによる全ゲノム解析から

研究では、高安病の患者団体等の協力を得て、167人の患者のDNAについて、健常人を対照に一塩基多型SNP解析アレイを用いた全ゲノム解析(GWAS)を実施。24,487SNPにおける解析で、既知のHLA-B領域を含む6つの疾患感受性遺伝子候補を見出した。これらについて再評価した結果、HLA-B領域に加えてIL12B、MLXの2領域が疾患と関連していることがわかった。

IL12Bは他の疾患にも関連

IL12Bは炎症サイトカインの構成要素の一部、MLXは転写因子の一種で詳細は不明である。今回、IL12BのSNPが高安病発症においてHLA-Bと相互作用し、両遺伝子が非リスク型であるホモ接合型である場合に比べて、リスク型を各領域で少なくとも1つ持つ場合(ヘテロ接合あるいはホモ接合)には高安病の疾患活動性が高く、重篤な合併症である大動脈弁閉鎖不全症を持つ割合が高いことが見出されている。

希少病の解明に光

希少病のこうした網羅的解析は検体を集めるのが困難とされてきたが、患者会等の協力を得ることで疾患の原因に迫る研究ができることを示した点も評価できる。 

IL12BのSNPは、これまで自己免疫疾患で実施された全ゲノム解析で見つかった遺伝子に比べて信頼度が高く、HLA-Bとの相互作用や臨床病型との関連は、IL12Bが高安病の中心的役割を果たす遺伝子であることを示している。IL12Bは他の自己免疫疾患や感染症との関連も報告されており、研究グルールは、今後他の疾患における診断や治療のアプローチが高安病にも適用できる可能性があるとしている。命名だけでなく、治療方法も本邦で見出されることが期待される。(長澤 直)

▼外部リンク

京都大学プレスリリース:
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news

原著:
http://www.cell.com/AJHG/retrieve/

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