アミロイドβ除去治療、「脳の掃除の仕組み」への影響は未解明
大阪公立大学は10月23日、アルツハイマー型認知症患者13人を対象にレカネマブ治療開始前と3か月後において、MRIを用いてグリンパティック・システムを反映する指標のDTI-ALPS indexを算出した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科放射線診断学・IVR学の大浦達史氏(博士課程3年)、立川裕之講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Magnetic Resonance Imaging」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も患者数が多い病気である。原因の一つとして、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積し神経細胞を傷つけることが考えられている。なぜ蓄積するのかは長らく不明であったが、近年、脳の老廃物を排出する「グリンパティック・システム」が注目され、この機能低下がアミロイドβの蓄積に関与する可能性が示されている。近年承認されたレカネマブ(製品名:レケンビ(R))は、蓄積したアミロイドβを減らし症状進行を抑えることが期待される薬剤である。ただし、アミロイドβの減少が”脳の掃除の仕組み”そのものに短期的にどのような影響を与えるかは十分にわかっていない。
レカネマブ治療前後の変化、MRIから得られる指標「DTI-ALPS index」で評価
そこで今回研究グループは、レカネマブ治療前後でこの仕組みがどう変化するかを、MRIから得られる指標「DTI-ALPS index」を用いて評価した。アルツハイマー型認知症患者13人(平均72歳)を対象に、レカネマブ治療開始前と3か月後に脳MRIを撮像し、DTI-ALPS indexを比較した。
治療開始から3か月時点ではDTI-ALPS indexに有意な変化は認められず
平均値は開始前1.515±0.152、3か月後1.513±0.161で、変化量の90%信頼区間は±0.05の実質的に同じ範囲(等価域)内に収まっており、統計学的にほぼ等しいと判定された。つまり、治療開始から3か月時点ではDTI-ALPS indexに有意な変化は認められなかった。
レカネマブによりアミロイドβ減少も、すでに進行した神経障害など短期間で回復しにくい可能性
アルツハイマー型認知症の病態は依然として未解明の点が多く、レカネマブ治療に伴う脳内変化の全体像も明らかではない。同研究結果は、レカネマブによりアミロイドβが減少しても、DTI-ALPS indexは短期間では変化せず、すでに進行した神経障害やグリンパティック・システムの機能低下が短期間で回復しにくい可能性を示唆する。今後は、年齢や性別、病期(MCI〜軽中等度AD)、血管リスク、白質病変の程度などで層別化し、さらに観察期間を延長することで、レカネマブ治療によるグリンパティック・システムの経時的な変化と治療結果との関連を精査することを目指す、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・大阪公立大学 プレスリリース


