日本の睡眠問題、因子となる通勤時間と住居規模との関連は?
大阪公立大学は9月19日、長い通勤時間は不眠症と日中の眠気を引き起こす要因になり、小さい住宅面積は不眠症を引き起こす要因になることが判明したと発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の松下大輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Transport & Health」にオンライン掲載されている。

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ストレスや疾患などが原因で、一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を有するといわれている。中でも日本人の1日の平均睡眠時間は、経済協力開発機構(OECD)による2021年の発表では、加盟国33か国において最も短く、平均を1時間以上も下回っている。睡眠時間が6時間未満の日本の有職者が適正な睡眠(7~9時間)をとれば、1380億ドル(約20兆円)の経済損失を防ぐとの調査結果も報告されている。
公衆衛生分野の研究では、睡眠健康を低下させる因子として、長い通勤時間や、都心の過密な居住環境による騒音光害が特定されている。都心は通勤に便利であるが、居住環境に恵まれた住居は郊外に比べて見つけにくい傾向がある。「どのような場所に、どの程度の規模の家を持てば睡眠に良いか」という現実的な問いに答えるには、住宅の立地や規模と睡眠健康の関係を捉える都市建築分野の研究が重要である。
今回の研究は東京都区部(東京23区)に通勤する首都圏在住者を対象に、通勤時間と住宅面積が不眠症や日中の眠気を予測するかどうか、これらの関係が人口統計的、社会経済的因子で調整しても維持されるかどうかを調べた。
4人世帯用住宅面積(95m2)の規模で通勤時間が52分を超えると、不眠症リスクが高くなる
研究グループは2024年9月に東京都区部に通勤する40歳~59歳の首都圏在住者を対象に、通勤時間と住宅面積が不眠症と日中の眠気にどのような関係があるかについてオンライン調査を実施し、1,757人分の回答を分析した。層別無作為抽出によるオンライン調査に基づき、通勤時間は自宅と職場の郵便番号と通勤手段より経路検索システムで算出した。不眠症と日中の眠気はアテネ不眠症尺度とエプワース眠気尺度を用いて評価し、睡眠アウトカム、通勤時間、人口統計学的/社会経済的因子の間の関連を、傾向スコアマッチングを用いた二変量ロジスティック回帰と多変量線形回帰と呼ばれる統計モデルにより分析した。
その結果、年齢や性別、収入、家族構成を考慮しても、長い通勤時間は不眠症と日中の眠気を予測し、小さい住宅面積は不眠症を予測した。
また、不眠症については通勤時間と床面積の間のトレードオフが見られた。これは4人世帯の都市型誘導居住面積水準(95m2)の住宅規模で、通勤時間が52分を超えると不眠症カットオフ値に達する関係であった。
住宅選択・供給の最適化により、都市圏通勤者の睡眠改善と経済損失軽減へ
今回の研究成果は、都市圏通勤者の睡眠健康向上に向けた、住宅選択と供給の重要性を示唆している。「住宅の立地と規模のトレードオフを考慮した住宅選択や住宅供給は、都市圏通勤者の睡眠健康の向上、睡眠関連経済損失の軽減に役立つ可能性がある」と、研究グループは述べている。
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