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ビフィズス菌増殖作用の個人差にLT-SBP遺伝子が影響していると判明-京大ほか

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2021年05月26日 PM12:15

ビフィズス菌がラクチュロースを利用する仕組みと、ビフィズス菌増殖作用に個人差が生じる理由は?

京都大学は5月24日、ビフィズス菌がラクチュロースを利用する仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大生命科学研究科の片山高嶺教授、 生活機構研究科の飯野久和教授、森永乳業株式会社らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

オリゴ糖の1種であるラクチュロースは、腸内のビフィズス菌を増やすことが知られている。しかし、その作用メカニズムは明らかにされていなかった。加えて、ラクチュロース摂取によりビフィズス菌が増殖する程度は、個人差があることが知られている。研究グループは今回、ビフィズス菌がラクチュロースを利用する仕組みを明らかにすると同時に、ビフィズス菌の増殖作用に個人差が生じる理由について、検証を行った。

ビフィズス菌がもつ「」がラクチュロースの利用に関与

まず、ラクチュロースとわずかに結合する基質結合タンパク質Bal6GBPのアミノ酸配列情報を元に、Bifidobacterium longum subsp. longum 105A株(以下、B. longum 105A株)のゲノム情報から配列が似ている3つの候補遺伝子(BL105A_0500、BL105A_0501、BL105A_0502)を選抜した。

変異を加えていないB. longum 105A株である野生株と、B. longum 105A株の3つの候補遺伝子をそれぞれ変異させたBL105A_0500遺伝子変異株、BL105A_0501遺伝子変異株、BL105A_0502遺伝子変異株をラクチュロースが唯一の糖源である培地で48時間培養した。その結果、BL105A_0502遺伝子変異株のみ生育が遅延したことから、遺伝子を変異させたことで、基質結合タンパク質LT-SBPの機能を失っていることを確認した。

次に、そのBL105A_0502遺伝子変異株に基質結合タンパク質LT-SBPを作るためのBL105A_0502遺伝子をプラスミドで補ったBL105A_0502遺伝子相補株を同様に培養したところ、生育が回復した。これらのことから、BL105A_0502遺伝子にコードされた基質結合タンパク質LT-SBPが、ラクチュロースの利用に関与していることが判明した。

日本人被験者89%の腸内細菌叢からLT-SBP遺伝子を検出

さらに、先行研究において収集した、健康な日本人成人394人(20歳~104歳、男性153人、女性241人)の糞便サンプルを用いて、LT-SBP遺伝子の日本人における保有率を調査した。LT-SBP遺伝子は353人(89%)の被験者から検出され、多くの日本人がラクチュロースを利用するビフィズス菌を腸内に保有していることがわかった。

先行研究で、健康な49人の女性(18~31歳)がラクチュロースを2週間摂取し、ビフィズス菌の数が有意に増加(平均2.2倍)する結果が得られた。そこで、ビフィズス菌数の変化とLTSBP遺伝子の量の関連性を調べたところ、摂取前のLT-SBP遺伝子量が中程度(1gの糞便中に107-109copy)の被験者群では、低程度(copy<107)や高程度(10<9copy)の被験者群に比べより高い増殖作用がみられ、ビフィズス菌数が平均で6.4倍に増えていることがわかった。なお、「低程度」はラクチュロースを利用できるビフィズス菌がいない、もしくは少しいるが競合となる細菌が多く増えることができない、「高程度」はビフィズス菌の増える余地がないため、あまり増えないこということを意味するという。

個人の腸内細菌叢に適したプレバイオティクス素材の予測・選択につながることに期待

今回の研究成果により、ビフィズス菌がラクチュロースを利用する仕組みが解明され、ラクチュロースによるビフィズス菌の増殖作用に個人差が生じる理由の一端が明らかにされた。「今後、さらに研究が発展し、各個人の腸内細菌叢に適したプレバイオティクス素材を事前に予測し、選択できることが期待される」と、研究グループは述べている。

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