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「ADH5/LDH2欠損症」の病態解析で治療薬候補を発見-京大ほか

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2021年01月21日 PM12:15

遺伝性再生不良性貧血症、2か月前の新規発見の続報

京都大学は1月20日、2020年11月に発見した遺伝性再生不良性貧血症「/ALDH2欠損症」について、患者の細胞等を用いて、iPS細胞をはじめとしたこの疾患のモデル細胞を作製して病態を解析し、さらに治療薬の候補となるALDH2活性化剤の効果を確認したと発表した。この研究は、同大生命科学研究科の高田穣教授、牟安峰教務補佐員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

遺伝性の再生不良性貧血は、小児の重症難病で、白血病や固形がんの原因ともなり、その解明は医学・生命科学の重要な研究課題だ。研究グループは、いままで見逃されていた新たな遺伝性再生不良性貧血症であるADH5/ALDH2欠損症を発見し、2020年11月に発表した。ALDH2はアルコールからできるアセトアルデヒドを分解する酵素であり、その遺伝子は変異によってお酒が飲めない体質となる有名なもの。ALDH2の変異自体は日本人の半数近くが持っている。ADH5/ALDH2欠損症の患者たちは、ALDH2に加えてホルムアルデヒド(ホルマリン)分解酵素のADH5が変異して、体内のホルマリン分解ができなくなり、これが発見された再生不良性貧血の原因だった。今回は、その続報である。

ALDH2もホルマリン分解の重要なバックアップ分子と判明

研究グループは、ADH5/ALDH2欠損症について、より理解を深めるため、健常人からのリンパ球、さまざまな細胞株、患者の細胞等を用いて、iPS細胞をはじめとしたこの疾患のモデル細胞を作製した。これを用いて解析した結果、まず、ALDH2も実はホルマリンを分解する重要なバックアップ分子であることが確認された。

ホルムアルデヒドが作られるのは造血分化プロセス自体だった

作製した患者モデルiPS細胞を人為的に造血細胞に変化させると(分化誘導)、DNA損傷を蓄積して、それまで順調であった増殖を停止することがわかった。したがって、DNAなどの生体分子を損傷し、毒性を発揮するホルムアルデヒドの産生は、細胞の通常の状態ではあまり起こっていないようだが、造血細胞の分化プロセスでは強く引き起こされることがわかった。造血は、骨髄で、幹細胞から白血球、赤血球などさまざまな血液細胞を分化させ生み出すプロセス。造血分化はタンパク質の脱メチル化を伴うことが想定され、このメチル基(CH3-)が酵素的にホルムアルデヒド(HCHO)に変換されるために多量のホルムアルデヒドが産生されると考えられるという。

ALDH2活性化剤の添加で患者由来iPS細胞が効率よく血球系へ増殖分化

この疾患の患者では、ALDH2遺伝子の変異のため、その酵素活性8割程度低下していると見られる。患者由来iPS細胞に、新規ALDH2活性化剤C1を添加すると、軽度ながらより活発に分裂、分化、増殖することがわかり、C1によってこの疾患が治療できる可能性が示された。C1を元に、さらに強力な薬物を開発できれば、今後、この疾患をはじめとした遺伝性再生不良性貧血症の画期的な治療法となる可能性があるという。

LDH2活性化剤はファンコニ貧血症にもよい治療法となる可能性

遺伝性再生不良性貧血には、さまざまな病型が知られているが、代表的かつ最も頻度の高いのが損傷DNAの修復ができない「ファンコニ貧血症」だ。最近の報告でファンコニ貧血におけるDNA損傷が、内因性に産生されるアルデヒドによることが示唆されてきており、今回の一連の研究は、その見方に決定的なサポートを与えるものとなった。ADH5/ALDH2欠損症では、造血分化によるホルムアルデヒドが分解できずDNA損傷が蓄積する。一方、ファンコニ貧血症では、ホルムアルデヒドの分解は正常だが、分解しきれず残ったホルムアルデヒドによるDNA損傷を修復できず、結果としてADH5/ALDH2欠損症とファンコニ貧血症は似たような症状を示すと考えられる。「LDH2活性化剤はファンコニ貧血症にもよい治療法となる可能性を秘めており、もしADH5活性化剤が開発できれば、すばらしい効果を発揮する可能性が考えられる」と、研究グループは述べている。

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