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ピロリ菌感染による胃炎発症の分子メカニズムを解明-阪大微研

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2020年10月01日 PM12:00

新たな治療法が望まれるピロリ菌感染、胃炎の発症機構は?

大阪大学微生物病研究所は9月29日、(いわゆるピロリ菌)が胃炎を引き起こすメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所所山崎晶教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Experimental Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

ピロリ菌は、世界人口の約50%に感染している病原体。ピロリ菌が感染すると、胃炎、胃がんの発症リスクが高まることから、抗生物質による除菌が推奨されている。ところが、近年、除菌による耐性菌の出現や、細菌叢バランスの破綻が問題となっており、併用や代替可能な新たな治療法が望まれていた。さらに、ピロリ菌が胃炎を発症する機構も不明だった。

ピロリ菌感染<コレステロール改変<αCAG産生<<免疫活性化<胃炎

研究グループは今回、胃炎にT細胞活性化が必要なことに注目した。T細胞活性化には、樹状細胞活性化が必要だが、ピロリ菌は、樹状細胞を活性化させる自然免疫受容体(TLR)のリガンドの形を巧妙に変えて、この受容体から逃れる能力を持っていることから、どのようにして樹状細胞を活性化させているのかは不明だった。研究グループは、ピロリ菌が持つ樹状細胞を活性化する物質を生化学的に分離、精製することに成功した。

単離された活性化物質は、ピロリ菌が宿主のコレステロールを改変して産生するピロリ菌特有の糖脂質、α-コレステリルグルコシド(α-cholesterylglucoside、)で、宿主の免疫受容体Mincleに認識されて免疫系を活性化することもわかった。さらにMincleを欠損するマウスにピロリ菌を感染させると、抗原特異的T細胞活性化及び胃炎が抑制されることが判明。この胃炎抑制効果は、野生型マウスに抗Mincle抗体を投与することでも観察されたことから、Mincleの阻害が治療につながることも示された。

αCAGと構造が類似で機能不明だったαCPGも炎症誘導物質だった

また、αCAGと構造が類似するものの、これまで機能が全く分かっていなかったピロリ菌糖脂質、α-コレステリルホスファチジルグルコシド(α-cholesteryl phosphatidylglucosides、αCPG)が、Mincleと同じファミリーに属する免疫受容体DCARに認識され、同様に免疫系を活性化することが判明した。αCAGとαCPGの両方を合成できないコレステリルグルコシルトランスフェラーゼ欠損ピロリ菌を感染させたマウスでは、胃炎が軽減されたことから、これらの糖脂質が胃炎を引き起こす原因物質であることが明らかになった。すなわち、ピロリ菌が宿主のコレステロールを取り込み、菌体内でαCAGとαCPGといった炎症誘導化合物に変換することで胃炎を引き起こす、という一連の分子メカニズムが初めて明らかになった。

研究グループは、「宿主側でこれらの受容体の働きをブロックすることや、ピロリ菌でこの糖脂質の生成に必要な酵素(コレステリルグルコシルトランスフェラーゼ)を阻害することが、抗生物質と併用可能な、あるいは抗生物質に取って代わる、新たな胃炎・胃がん発症を抑える治療標的として期待される」と、述べている。

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