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悪性中皮腫への光免疫療法を開発、ポドプラニンを分子標的として-名大ほか

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2020年04月27日 PM12:00

新規治療法の開発が望まれる悪性中皮腫

東北大学は4月24日、前臨床研究として、ポドプラニンを分子標的とする悪性中皮腫に対する近赤外光線免疫療法の開発に成功したと発表した。この研究は、名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程4年(現、一宮市立一宮市民病院呼吸器内科)の西永侑子大学院生(筆頭著者)、同大高等研究院・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)・医学系研究科呼吸器内科学の佐藤和秀S-YLC特任助教(責任著者、筆頭著者)、同大未来社会創造機構・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)の湯川博特任准教授、同大医学系研究科呼吸器外科学の芳川豊史教授、同大大学院工学研究科の馬場嘉信教授、国立病院機構名古屋医療センターの長谷川好規院長ら、米国がんセンター(NCI/NIH)分子治療診断部門の小林久隆主任研究員、東北大学未来科学技術共同研究センター/東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野の加藤幸成教授らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Cells」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

悪性中皮腫は、中皮細胞から発生する悪性腫瘍。年間死亡数は増加傾向にあり、今後さらに増加することが予想されている。また、肺がんに比べてまれで、予後不良であり、5年生存率は治療に関わらず10%程度。手術適応外では、さらに不良とされている。切除不能例に対する治療選択肢は乏しく、これまでにさまざまな薬剤の臨床試験が行われてきたが、有効性は証明されていない。そのため、新たな治療法の開発が望まれている。

ポドプラニンは、従来から悪性中皮腫の特異的な診断標的として用いられてきた。東北大学の加藤幸成教授らの研究グループが、世界に先駆けてポドプラニンに対する抗体を開発し、ポドプラニン抗体を治療に応用する技術開発を進めている。

近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)は、アメリカ国立がんセンター・衛生研究所(National Cancer Institute, National Institutes of Health)の小林久隆博士らが報告したがん治療法。がん細胞が発現するタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受物質IR700の複合体を合成し、その複合体が細胞表面の標的タンパク質に結合している状態で690nm付近の近赤外光を照射すると細胞を破壊する仕組み。最近、名大の佐藤和秀S-YLC特任助教らのグループにより、その新しい細胞死の仕組みの一端が解明され、新規がん治療方法として注目が集まっている。

顕著な腫瘍縮小効果をマウス胸膜播種悪性中皮腫モデルで確認

今回、研究グループは、NIR-PITとポドプラニン抗体を、悪性中皮腫の治療に応用することを試みた。まず、名古屋大学医学部附属病院で手術を受けた日本人患者のうち、研究目的での使用に同意した患者の手術検体を用いて、腫瘍組織に新規の抗ポドプラニン抗体NZ-1によるポドプラニンの免疫染色を実施。悪性中皮腫の組織型別に分類した結果、上皮型におけるポドプラニン陽性率が86.7%、二相型(上皮型と肉腫型が混在)におけるポドプラニン陽性率が66.7%であり、全体で83.3%の患者にポドプラニンの発現が見られた。白人と日本人の悪性胸膜中皮腫の細胞におけるポドプラニンの発現を比較したところ、どちらの人種の細胞でも同様にポドプラニンの発現を認め、人種を超えて広く悪性胸膜中皮腫に発現していることが示唆された。

次に、NZ-1と水溶性光感受物質IRDye 700DX()の複合体を合成し、NZ-1-IR700を作製。NZ-1-IR700を用いて、ヒト悪性胸膜中皮腫がん細胞に対するNIR-PITを実施した。顕微鏡で観察した結果、近赤外光の照射後、速やかに細胞の膨張、破裂、細胞死が見られた。標的細胞(ポドプラニン陽性ヒトがん細胞)と非標的細胞(ポドプラニン陰性ヒトがん細胞)を共培養し、同時に近赤外光を照射したところ、標的細胞のみに細胞死が起こり、非標的細胞には特に影響がなかったという。マウスのがんモデルにおいて、経静脈的に薬剤を投与しても腫瘍部位に十分に薬剤が到達することが確認できた。また、マウスのがんモデルにおいて治療の結果、明らかな腫瘍の増大抑制が確認でき、マウス胸膜播種悪性中皮腫モデルにおいても顕著な腫瘍縮小効果が得られたという。

選択的にがん細胞のポドプラニンを認識する技術CasMabをNIR-PITに応用し、選択性の高い治療を目指す

今回、ポドプラニンを標的とする悪性中皮腫に対するNIR-PITの効果を、細胞実験と動物実験で確認した。また、ポドプラニンが白人と日本人の中皮腫がん細胞に人種を超えて、広く発現していることも確認できた。今回の研究成果は、NIR-PITを人の悪性中皮腫治療へ応用する際、基礎的知見として貢献することが期待される。

また、今回の研究では、NZ-1によって免疫染色による組織診断から、NIR-PITによる治療まで、同一の抗体によって行えることが証明され、診断から、悪性中皮腫のポドプラニンの発現確認と、それに引き続く治療へとの流れが創設された。最近、さらに選択的にがん細胞のポドプラニンを認識することができるcancer-specific monoclonal antibody(CasMab)技術を用いた新世代の抗体が、東北大学の加藤幸成教授らにより開発されている。現在、CasMabをNIR-PITに応用することで、さらに選択性の高い治療を目指しているという。今後、胸部腫瘍に対する新しい近赤外光の照射デバイスの開発や従来の治療との併用など、さらなる応用が検討される、と研究グループは述べている。

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