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血液中を巡るNAD合成系酵素「eNAMPT」が、哺乳類の老化と寿命を制御-AMED

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2019年06月19日 PM02:15

eNAMPTの老化・寿命における役割を研究

(AMED)は6月14日、血液循環中にあるNAD合成系酵素「」が、マウスとヒトで加齢に伴い減少すること、またマウスでは血液中のeNAMPT量が個々の個体の余命と強い正の相関を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、米ワシントン大学医学部発生生物学部門兼医学部門の今井眞一郎教授と、、中枢性老化・睡眠制御研究プロジェクトチームの佐藤亜希子プロジェクトリーダーとの共同研究によるもの。研究成果は、国際科学誌「Cell Metabolism」に日本時間で同日、オンライン掲載された。


画像はリリースより

最近の老化・寿命研究により、生命活動にとって必須であるNADが全身のさまざまな臓器・組織において加齢とともに低下し、この低下が、臓器や組織の機能低下、ひいては老化関連疾患の病因を引き起こしていることが報告されている。NAD低下の原因は、NAD合成の低下とNAD消費の増大のいずれか、あるいはその組み合わせによることが明らかになってきている。

哺乳類の、主要なNAD合成経路は、NAMPTという酵素によって制御されるもので、ビタミンB3の一種であるニコチナミドを出発物質とする。NAMPTはニコチナミドを、NMNという物質に変換する。NMNには顕著な抗老化作用があることが明らかになっている。NMNはさらに別の酵素によってNADに変換される。すなわち、NAMPTはNAD産生の制御を行う重要な酵素のひとつであり、さらに、NAD合成を促進することによって、NAD依存性タンパク脱アセチル化酵素であるSIRT1の活性を増大させることが知られている。NAMPTには、細胞内型()、細胞外型(eNAMPT)の、2つの独立した型がある。iNAMPTはSIRT1によって脱アセチル化されると、eNAMPTとして脂肪組織から分泌されるようになることがわかっている。しかしながら、NAD合成系酵素としての機能が明らかなiNAMPTに比べて、血液中を循環しているeNAMPTについては、哺乳類の老化・寿命制御にどのような役割を果たしているのか、現在まで不明のままだった。

血液中のeNAMPT量が個体の余命と強く相関

今回研究グループは、まず血液中を循環しているeNAMPTの加齢による変化を、マウスとヒトで調べた。その結果、マウスでは6か月齢から18か月齢にかけて、オスで33%、メスで74%、血液中のeNAMPT量が減少することが判明した。このeNAMPT量の減少はヒトにおいても認められ、eNAMPTの減少が哺乳類の老化過程に共通の現象である可能性が示唆された。そこで、老齢マウスをランダムに選んで、ある一定の時点で血液中のeNAMPT量を測定し、その時点から個々の個体の余命がどのくらいあるかを調べたところ、血液中のeNAMPT量と余命の間に強い正の相関を発見。すなわち、血液循環中のeNAMPTが、・寿命の制御に重要な役割を果たしている可能性が強く示唆され、eNAMPT量を測定することにより、老齢マウスのそれぞれの個体の余命がどのくらいあるのか予測できる可能性が示された。

次に、脂肪組織でNAMPTを特異的に発現させて、血液循環中のeNAMPT量が老化しても保たれるようなマウス、ANKI(adipose tissue-specific Nampt knock-in)マウスを作製し、詳しく解析。その結果、ANKIマウスは対照群に比べ、24か月齢の時点で血液中のeNAMPT量が3倍以上高く、老齢ANKIマウスのメスでは視床下部、海馬、膵臓、網膜、などの組織で、オスでは膵臓、網膜で、対照群よりも高いレベルのNADが保たれていた。さらに、老齢ANKIマウスは対照群に比べて、観覧車を回す身体活動能力や睡眠の質などに関し、多彩な抗老化作用を示すことが判明した。これらの結果から、血液循環中のeNAMPT量を保つことによって、視床下部、海馬、膵臓、網膜など、さまざまな臓器・組織のNADおよび機能を保つことがわかった。

さらに詳しい解析により、eNAMPTはマウスでもヒトでも細胞外小胞(extracellular vesicles; EVs)に封入された形で分泌され、血液を循環しており、標的細胞に送り込まれることによってNMN/NAD合成を賦活化することが明らかになった。そこで、若齢個体からeNAMPT内包EVを精製し、老齢個体に投与したらどのようなことが起こるかについて検討。その結果、4~6か月齢のマウスから精製したeNAMPT内包EVを、20か月齢のマウスに投与すると、夜間(活動期)に観覧車を回す身体活動能力が顕著に上昇するとともに、日中(休息期)の活動はより低くなることが判明。これは、eNAMPT内包EVの投与によってより深く眠るようになったためではないかと推測された。さらに詳細な解析により、EVに内包されているeNAMPTを投与することが、加齢による臓器・組織の機能低下を防ぎ、寿命を延長させうる効果的な抗老化方法論となることが示唆されたという。

今回の研究結果は、哺乳類における老化・寿命制御のメカニズムを明らかにする上で重要となる。現時点では、血液中を循環しているeNAMPT内包EVが、どのようにして特定臓器・組織で認識されるのか、というメカニズムについては不明であるため、このメカニズムを明らかにすることで、今後、人工的に作製したeNAMPT内包EVを、抗老化方法論の手段として使用することができるようになると期待されると、研究グループは述べている。

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