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日本人の孤発の統合失調症の発病にデノボ点変異が関与か-徳島大ら

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2017年06月09日 PM02:00

TBL1XR1遺伝子のデノボ点変異がウィントシグナリングの活性を変化

徳島大学は6月6日、TBL1XR1遺伝子のデノボ点変異がウィントシグナリングの活性を変えることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学研究部精神医学分野の沼田周助准教授らの研究グループが、、高知大学、、愛媛大学大学院と共同で行ったもの。


画像はリリースより

統合失調症は罹患率1%と頻度が高く、世界保健機関(WHO)によれば長期的な障害をきたす疾患のうちでトップ10に入る主要疾患。思春期から成人早期に発症し、慢性・再発性の経過をたどる。発病には遺伝要因が深く関わっていると考えられているが、家族の中に発病者がみられないのに統合失調症が発病する孤発例もある。

8家系から9つのデノボ点変異を同定

研究グループは、孤発の統合失調症の発症メカニズムを明らかにするため、日本人の統合失調症患者と精神疾患でない両親の遺伝子配列を次世代シークエンサーで解読・解析した。18組のトリオ(患者とその両親)のエクソン領域の塩基配列を調べることにより、8家系から9つのデノボ点変異(子に生じた、親が持たない新たなゲノムの変異)を同定。これらのうち、TBL1XR1遺伝子は、自閉症でもデノボ点変異の報告があったため、この遺伝子の変異(TBL1XR1[c.30C>G(p.Phe10Leu)])に注目し、構造解析と機能解析を行った。

構造解析では、Leu10モデルではPhe10モデルと比較して周囲の残基との接触が少なくなり、構造が不安定になることが判明。機能解析では、TBL1XR1の変異により、TBL1XR1の結合タンパクであるN-CoRへの結合が弱まる一方で、βカテニンへの結合が強まり、統合失調症での異常が報告されているウィントシグナリングの転写活性が増強されることが判明したという。

今回の研究により、日本人の孤発の統合失調症の発病に、デノボ点変異が関与する可能性が示唆された。研究グループは、「デノボ点変異が、複数の統合失調症患者においても認められるかどうかの検証が必要」と述べている。

 

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