チルゼパチドとセマグルチド、減量効果が高いのはどっち
イーライリリー(Eli Lilly)社の肥満症治療薬であるゼップバウンド(一般名チルゼパチド)を使用した人では、ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)社のウゴービ(一般名セマグルチド)を使用した人より体重の減少率が高かったことが、第3b相臨床試験で示された。米ワイル・コーネル・メディスンのLouis Aronne氏らが実施したこの試験の結果は、欧州肥満学会議(ECO2025、5月11~14日、スペイン・マラガ)で発表されるとともに、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月11日掲載された。

画像提供HealthDay
チルゼパチドとセマグルチドはいずれも食欲と満腹感を調節するホルモンを模倣することによって作用する。AP通信によると、チルゼパチドはGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の2つのホルモンをターゲットにするが、セマグルチドはGLP-1のみをターゲットにするという違いがあるという。これらの薬は非常に人気が高く、2024年のKFF(Kaiser Family Foundation)の調査によれば、米国の成人の約8人に1人にいずれかの薬の使用経験があるという。
今回の臨床試験は、2型糖尿病ではないが肥満(BMIが30以上、または27以上)であり、体重に関連する健康問題を1つ以上有する18歳以上の成人751人を対象に実施された。試験参加者は、週1回、72週間にわたり、チルゼパチド(10mgまたは15mg)、またはセマグルチド(1.7mgまたは2.4mg)のいずれかの皮下注射を受ける群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。
72週間後の時点での体重変化率の最小二乗平均値は、チルゼパチド群で−20.2%(95%信頼区間−21.4〜−19.1)、セマグルチド群で−13.7%(同−14.9〜−12.6)、体重変化量の最小二乗平均値は、チルゼパチド群で−22.8kg(同−24.1〜−21.5)、セマグルチド群で−15.0kg(同−16.3〜−13.7)であり、減量に関してはチルゼパチドの効果の方が高いことが示された。また、ウエスト周囲径の変化量の最小二乗平均値についても、チルゼパチド群で−18.4cm(同−19.6〜−17.2)、セマグルチド群で−13.0cm(同−14.3〜−11.7)であり、チルゼパチドの効果の方が高かった。さらに、チルゼパチド群で体重が10、15、20、25%以上減った人の割合は、セマグルチド群のそれぞれ1.3、1.6、1.8、2.0倍であった。このほか、両群ともに男性よりも女性の方が体重の減少率が約6%高かったことや、両群で血圧値、血糖値、血中脂質値が改善したことも確認された。
一方、試験参加者の約4分の3から吐き気や便秘、下痢、嘔吐を含む軽度または中等度の胃の問題の報告があり、消化器系の副作用を理由にチルゼパチド群の2.7%、セマグルチド群の5.6%が試験参加を中止していた。
ゼップバウンドとウゴービは最近、米食品医薬品局(FDA)の供給不足リストから除外された。製薬企業は1カ月当たりの患者負担を500ドル(1ドル145円換算で約7万2,500円)以下にするプログラムを導入している。しかし、CVSヘルスは最近、7月1日からの保険適用薬のリストでウゴービを優先すべき選択肢とする一方、ゼップバウンドは同様の位置付けにはならないことを発表した。
肥満ケア企業のknowledgewellのチーフ・メディカル・オフィサーであるAngela Fitch氏は、「治療を必要とする患者があまりにも多いため、われわれは全ての薬剤を使わなければならない」と話す。またFitch氏は、ウゴービは重度の心疾患のリスクを20%低下させることが示されている点にも言及している。
なお、今回報告された臨床試験は、イーライリリー社の資金提供により実施された。
▼外部リンク
・Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of Obesity