成瀬氏は、「医薬品『零売』規制の妥当性を問う」と題した見解で、零売について「通知行政である点でも問題だが、規制内容そのものが今や存立根拠を失っている」と指摘。
厚労省の通知では、非処方箋医薬品についても処方箋に基づく販売を原則としている。その根拠として、「医療用医薬品のパッケージ、容量、添付文書等は医師・薬剤師など医療者が見るために作られ、一般人が適切に使用するための十分な情報が分かりやすく提示されていない」としている。
これに対し、成瀬氏は「医師のみが医療の担い手であるという発想であり、こうした根拠は全く妥当性を欠く」と指摘。「6年制薬学教育となって約20年経過するため、薬剤師が医療の担い手であるのは明らかで、薬剤師が処方箋なしで医薬品を販売することが医療ではないとの発想は時代錯誤」と厳しく批判した。
また、処方箋調剤、零売共に、薬剤師が医薬品に関する患者への説明や指導の中心となることに変わりないとし、添付文書等は医療者が見るために作られるため処方箋が必要という根拠は実態を踏まえていないと指弾した。
これらを踏まえ、零売に関して取るべき施策として、薬剤師の職能を尊重するよう求めた。医師の処方箋通りに黙々と調剤する業務は機械化を進めるだけとし、薬剤師を薬物療法に関する高度な専門性を持つ医療の担い手として認め、医師との連携や役割分担を進めるべきとした。
さらに、医療用医薬品の区分を廃止し、処方箋医薬品以外はOTC薬とする諸外国と同様のシンプルな制度に切り替え、非処方箋医薬品をOTC薬として薬剤師が堂々と販売できるようにすることを求めた。
その場合は、公的医療保険の給付対象外とすることを原則にすることを提案した。患者の自己負担は増加するものの、非処方箋医薬品の多くが軽症疾患に用いられ価格も低いとして、セルフメディケーションが推進され患者の利便性が高まり、医療保険財政の改善が期待されるとした。
患者は、重症化が懸念される場合など、診察が必要な場合だけ受診するようになることも利点に挙げた。