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抑うつに対し「体温調節」が新たな治療法となる可能性

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2024年02月19日 PM02:00

抑うつ症状のある人は体温も高い

抑うつと体温上昇は関連していることが、新たな研究で示唆された。どちらが原因であるのかまでは明らかになっていないものの、研究グループは、体温の調節が抑うつに対する新たな治療法となり得る可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学分野のAshley Mason氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に2月5日掲載された。


画像提供HealthDay

この研究では、2020年春からおよそ7カ月にわたって実施された研究(TemPredict Study)のデータを用いて、体温と抑うつとの関連が検討された。TemPredict Studyは、大規模集団の中から初期段階の新型コロナウイルス感染症患者を見つけ出すために市販のウェアラブルデバイス(以下、デバイス)で収集したデータを活用できるかどうかを検討した研究である。研究参加者はデバイスの装着により体温を測定したほか、体温計で測定した体温の報告も行っていた。また、毎月1回、電子メールを通じて抑うつ症状に関する調査に回答していた。自己報告による体温に関する解析は2万880人(平均年齢46.9歳、男性53%)、デバイスにより測定された体温に関する解析は2万1,064人(平均年齢46.5歳、男性56%)を対象に行われた。

解析の結果、自己報告による体温とデバイスにより測定された体温の両方で、覚醒時の体温が高いほど、抑うつ症状の重症度も高まることが明らかになった。また、統計的に有意ではなかったが、デバイスで測定された体温のデータから計算された日内の体温振幅が小さいほど、抑うつ症状の重症度が高い傾向があることも示された。

ただし本研究では、体温の上昇が抑うつ症状を誘発するのか、あるいは抑うつ症状が体温の調節機能を低下させて体温上昇を招いているのか、それとも抑うつ症状と体温の関連性に両者が少しずつ関与しているのかについては明らかにならなかった。

Mason氏はUCSFのニュースリリースで、「地理的に広範な人々において、自己報告とウェアラブルセンサーの両方で評価された体温と抑うつ症状との関連を調べた本研究は、われわれが知る限りでは、これまで実施された同様の研究の中で最も規模が大きい」と語り、「米国でうつ病の罹患率が上昇していることを考えると、新たな治療法の可能性が見えたことに対してわれわれは興奮している」と付け加えている。

Mason氏らは今後の研究で、うつ病患者の体温を追跡することで、温熱療法を適切なタイミングで実施できるかどうかを検討する予定だと話している。(HealthDay News 2024年2月7日)

▼外部リンク
Elevated body temperature is associated with depressive symptoms: results from the TemPredict Study

HealthDay
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