正看護師など一部の職種の医療従事者は自殺リスクが高い
米国の正看護師や医療技術職、医療補助職の従事者では、一般人口と比べて自殺リスクが高いことが、米コロンビア大学精神医学教授のMark Olfson氏らの研究で示された。詳細は、「Journal of the American Medical Association（JAMA）」9月26日号に掲載された。
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Olfson氏らは以前、正看護師、ソーシャルワーカーや他のビヘイビアヘルスに関わる医療従事者では、非医療従事者と比べて薬物の過剰摂取による死亡リスクが高いとする研究結果を報告している。その他の先行研究は、医師のメンタルヘルスに焦点を当てたものが多く、医療業界で働く残りの約95％の医療従事者のメンタルヘルスについてはほとんど明らかになっていない。
この研究でOlfson氏らは、26歳以上の医療従事者184万2,000人〔年齢中央値44（四分位範囲35〜53）歳〕が参加した2008年の全米コミュニティ調査（American Community Survey；ACS）のデータを2019年12月31日までの死亡記録にリンクさせ、年齢と性別で標準化した医療従事者の自殺率を計算した。医療従事者は、1）医師、2）正看護師、3）その他の診断または治療に関わる医療従事者、4）医療技術職の従事者、5）医療補助職の従事者、6）ソーシャルヘルスまたはビヘイビアヘルスに関わる職種の医療従事者の6群に分類した。また、Cox比例ハザードモデルにより、年齢、性別、人種・民族、婚姻状態、教育歴、居住環境（市部か郡部か）で調整し、非医療従事者と比較した場合の医療従事者の自殺のハザード比（HR）を推定した。
その結果、医療補助職の従事者、正看護師、および医療技術職の従事者は、非医療従事者と比べて自殺による死亡リスクが高いことが示された（HRは同順で、1.81、1.64、1.39）。年間の標準化自殺率（10万人対）は、医療補助職の従事者で21.4人、正看護師で16.0人、医療技術職の従事者で15.6人であった。一方、医師では13.1人で、非医療従事者（同12.6人）とほぼ同程度だった。さらに医療従事者と自殺リスクの関連は、特に女性で強いことも示された。なお、今回の研究で分析したデータには、医療従事者のストレスやバーンアウトを増大させるきっかけとなった、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミック時のデータは含まれていなかった。
Olfson氏らは、一般人口よりも自殺リスクが高かった職種の医療従事者は、病気の患者のケアを行い、重労働をこなしながらストレスフルな業務に取り組まなくてはならない一方で、患者の転帰に対してどうすることもできないと指摘する。さらに同氏は、「医療従事者は、患者などとの対人関係において、自分に高いレベルでの達成を求めたり、完璧主義であったり、強迫的な特性を見せることが多い。このような特徴は、医療従事者を仕事に過度に専念させ、休みを取ることを難しくさせる。こうしたことの全てがセルフケアの不足をもたらし、自分には助けが必要だと気付くのを遅らせることにつながる。また、メンタルヘルスケアに関しては、依然としてスティグマが根強く残っている」と語る。
この研究には関与していない専門家で、米ノースウェル・ヘルスの心的外傷性ストレス・レジリエンス・リカバリーセンターのMayer Bellehsen氏は、医療従事者のサポートを強化するために医療システムを変えることが大きな課題だと指摘している。同氏は、「メンタルヘルスへのアクセス改善、スティグマへの対処、十分な資源と支援の提供、生産性を重要視しない環境の整備など、さまざまなことを変革する必要がある」と主張。さらに、「医療従事者の自律性を尊重し、彼らが望む臨床ケアを提供できるよう、医療従事者に権限を与えることにもっと重点を置くことも助けになるかもしれない」と付け加えている。
一方、医療従事者の家族や友人にできることとして、Bellehsen氏は、「その人の感情や行動、気分の変化に注意を払い、少しでもメンタルヘルスの変化を感じるのなら、それを軽視しないようにすることが重要だ」と述べる。そして、自殺念慮も含めてその人の調子について尋ね、万一、自殺念慮があるのなら、助けとなるリソースにつなげるべきだと話している。
▼外部リンク
・Suicide Risks of Health Care Workers in the US
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