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ハイリスク手術を受けた患者、「窓あり・なし」などが転帰に影響?-ACS臨床会議

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2022年11月01日 PM12:00

病室の特徴が入院患者の手術後の転帰に影響か

手術後に滞在する病室の特徴により患者の転帰が変わる可能性のあることが新たな研究で明らかになった。、ナースステーションに最も近い部屋、医師らが病室を直接見通せる部屋、窓のある部屋などが手術後の患者の転帰に影響を及ぼすことが示されたという。米ミシガン大学外科学、および建築・都市計画分野のAndrew Ibrahim氏らによるこの研究結果は、米国外科学会(ACS)臨床会議(Clinical Congress 2022、10月16〜20日、米サンディエゴ)で発表された。


画像提供HealthDay

Ibrahim氏らは、同大学病院の設計図をレビューし、窓の有無や個室か二人部屋かなどの設計上の特徴に基づいてそれぞれの病室をコード化した。その上で、同大学病院で2016年から2019年の間に結腸切除術や膵切除術、腎臓移植など13種類のリスクの高い手術を受けた患者3,964人の臨床転帰(死亡、入院期間など)と病室の設計上の特徴との関係を検討した。

その結果、ハイリスク手技を受けた患者の転帰は、上述した病室の設計上の特徴の影響を受けることが明らかになった。患者の併存疾患と手術手技の複雑さを考慮した後では、窓のない病室での入院では、窓のある病室での入院と比べて、死亡リスクが20%上昇することも示された(オッズ比1.2)。また、窓のない病室に入院した患者では窓のある病室に入院した患者と比べて、30日死亡率が10%上昇していた(同1.1)。しかし、病室の設計による死亡率の差は、入院期間で調整すると認められず、このことから、入院期間で死亡率の差を説明できないことが示唆された。

こうした結果を受けてIbrahim氏は、「これらの結果は、滞在する病室の設計上の特徴により患者の転帰が変わってくることを示す新たなエビデンスとなるものだ。またこの研究から、病院の設計が患者の転帰に影響を及ぼし得るのかを調べる研究実施の必要性も示された」と述べている。

さらに、Ibrahim氏らは、よりリスクの高い患者はすでに、ナースステーションに近く、医師らの直接的な見通しもきく、窓のある個室に割り当てられる確率の高いことに気付いたという。同氏は、「このことから、患者を病室に割り当てる役を担う看護師長は、ある特徴を持つ病室が他の病室よりも患者にとって良いことを知っている可能性がうかがわれる」と推測する。その上で、「最前線で医療に従事している人々は、全ての病室が患者の転帰にとって同じではないとするわれわれの考えにある程度の同意を示している。今回、実際にその考えに従って入院患者に病室が割り当てられていることが確認できた」と付け加えている。

米マウントサイナイ・アイカーン医科大学一般外科部長のDaniel Herron氏は本研究について、「非常に考えさせられる結果だ。われわれは、建築環境がそこにいる人々の気分や快適さに影響することは認識しているが、通常、それが患者の手術後の転帰に影響を与え得るとは考えていない」とコメント。「病室の種類が死亡率に影響を与え得るのかを知るためには、大規模なランダム化比較試験を行う必要がある。ただ、これは大変な努力を要するだろう」と述べている。

Ibrahim氏は、「建物を建てて入居した後には、その建物の機能や環境を評価する必要があるが、米国の病院で、こうした評価が行われているのは5%に満たない。今回の研究結果は、われわれがこの評価をもっと定期的にかつ体系的に行うべきことを示唆するものだ」との見方を示している。また、すでに看護師長が非公式に実践している患者の病室への割り当ての方策を正式に採用することも提案している。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年10月20日)

▼外部リンク
Evaluating Mortality & Hospital Room Design after High-Risk Inpatient Surgery

HealthDay
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