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肺動脈性肺高血圧症の新規治療標的として「ADAMTS8」を同定-東北大

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2019年10月17日 PM12:15

原因不明の右心不全が起こる「肺動脈性肺高血圧症」

東北大学は10月15日、指定難病である肺動脈性肺高血圧症の新規治療標的と治療薬候補を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授、佐藤公雄准教授、大村淳一医師の研究グループが、同大加齢医学研究所の呼吸器外科学分野と共同で行ったもの。研究成果は、米国心臓協会(AHA)の学会誌「Circulation Research」(電子版)に掲載されている。


画像はリリースより

肺動脈性肺高血圧症は国の指定難病で、国内における患者数は年々増加しつつある。肺動脈性肺高血圧症では、肺動脈を取り囲む血管平滑筋層が厚くなることで肺動脈の内側が異常に狭くなり、血液の流れが悪くなり血圧が上昇。さらに、狭くなった肺動脈に血液を流すために心臓(右心室)に負荷がかかり、その結果、右心室の機能が低下し、右心不全が引き起こされる。しかし、この疾患がどのような仕組みで起こるのかについては解明されていなかった。発症後の平均生存期間は成人で未治療の場合約3年で、薬剤による根治治療は難しく、最終的には肺移植が必要となる。

既存の感染症治療薬メベンダゾールがADAMTS8の増加を抑制することを発見

研究グループは、東北大学病院循環器内科が蓄積してきた多くの臨床検体を用いて、これまで肺動脈性肺高血圧症との関連が全く示唆されていなかったタンパク質ADAMTS8が、肺動脈性肺高血圧症の新規病因因子であることを発見した。さらに、肺動脈性肺高血圧症動物モデルや多くの臨床検体を用いた解析の結果、ADAMTS8が肺血管内腔の狭小化と右心不全を促進することを初めて明らかにした。

加えて、同研究では肺動脈性肺高血圧症患者由来の細胞を用いて創薬スクリーニングを行い、既存の感染症治療薬の一つであり、寄生虫の治療において一般的に投与されているメベンダゾールが肺動脈性肺高血圧症の有効な治療薬候補となることを明らかにした。メベンダゾールを肺動脈性肺高血圧症モデル動物に投与するとADAMTS8の増加が抑えられ、肺高血圧が顕著に改善されたという。

今回の研究成果から、ADAMTS8を標的とするメベンダゾールに代表される肺高血圧治療の新しい薬物治療の開発が期待される。(QLifePro編集部)

 

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