
■学術誌も充実に向け改革
来年度から任期2年の会頭に就任するに当たって、奥氏は「まず全体の会員数減少を何とか食い止めたい。国際化も次のステップとして、外国人会員のメリットを考えていくと共に、学術誌の改革にも取り組みたい」と抱負を語る。薬学系の学会が増加している現状にあって、会員数の減少が大きな課題となっているが、奥氏は「薬学会がベースにあって、その上に様々な専門学会があるという意義の違いを理解してもらい、薬学全体のアイデンティティーとして入会してほしいということはアピールしていきたい」との考えを示す。
一方で、学生会員は増加傾向にある。学部生や大学院生が薬学会年会で卒業研究を発表するためだ。奥氏は、さらに学生会員の発表機会を増やすことが必要とし、「そのためには部会と支部の活性化が重要。最近は、支部大会でも優秀発表賞を贈呈しているので、それをもっと充実させていきたい」との方針を強調。「支部と部会の活性化は、薬学会全体につながるだけに非常に重要。どうやって学生のインセンティブを高められるのか、それを支援していけるのかを考えていきたい」と話している。
国際化も継続した課題で、これまでも国際シンポジウムの開催などに取り組んできたが、奥氏は「次のステップとして、外国人の会員、学術誌の外国人エディターを増やしていきたい」との考えを示す。薬学会年会での発表は「会員」が条件となっているため、アジアなど海外からの参加者は発表できないが、外国人が会員になるメリットがないのも現状。奥氏は「外国人の会員は会費を安くするなど入会のメリットを考え、海外からも入会してもらえるようにしたい」と話している。
もう一つは、学術誌の改革に着手し、国際化の一環として外国人エディターの増員を検討する。一方、国内でも様々なレベルの研究者が投稿できるように、薬学の基盤を確保しながら学術誌のバリエーションを広げたい考えである。
薬学会が刊行する学術誌には、「薬学雑誌」「ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン」(CPB)、「バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン」(BPB)の3誌がある。最近は臨床薬学領域が発展しつつあるものの、BPBへの投稿はハードルが高いという課題があった。
奥氏は、「薬学雑誌」で臨床薬学領域の英文投稿ができること、ケースレポートも投稿可能になったことを挙げ、「まず薬学雑誌への投稿を目標にして、それをクリアした研究者はBPBに挑戦できるよう学術誌のバリエーションを作ることにより、様々な研究者のニーズに応えられる充実した学術誌にしていきたい」と意欲を示す。
薬学教育についても、奥氏は「これまでモデル・コアカリキュラムの改訂などに薬学会は中心的に関わってきたわけで、これからも他の学会と協力しながら薬学会がイニシアチブを取れる体制を作っていかなければならない」とした上で、「基礎系と臨床系の研究から6年制教育、4年制教育まで全て含めたベースに薬学会があるべきだと思う。時代の変化に対応していくためにも、薬学に関しては薬学会が率先してアイデアを出したり、様々な分野の人たちが語り合う場を作るなど、ベースとして働いていく必要がある」と薬学会の役割を位置づけた。
その上で、幼少時からの薬学教育を充実させ、若い世代が薬学に興味を持つような取り組みが必要と指摘。「将来、薬学会を担っていくベースとなる人材の育成に力を入れ、薬学の活性化につながるようにしたい」と将来を見据えた。