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がんの転移抑制に、風邪薬の成分フルフェナム酸が有効-北大

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2016年10月07日 PM01:30

深く浸潤する膀胱がんは、薬剤耐性を解除し、転移を抑えることが必要

北海道大学は10月5日、風邪薬の成分である非ステロイド系抗炎症薬のフルフェナム酸が、がんの転移と抗がん剤に対するがんの抵抗力を抑えることを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科腫瘍病理学分野の田中伸哉教授らと、腎泌尿器外科の篠原信雄教授らの共同研究によるもの。研究成果は「Scientific Reports」誌に掲載された。


画像はリリースより

日本では毎年約2万人が膀胱がんに罹患しており、そのうち8,000人が死亡しているといわれている。膀胱がんは何度も再発を繰り返すのが特徴で、深さが浅いがんと膀胱の壁の筋層に到達する深い浸潤がんに分けられる。浅いがんは予後が良好だが、浸潤がんは肺などに転移しやすく予後不良である。浸潤がんの治療には通常、シスプラチンなどの抗がん剤が用いられるが、薬剤耐性の獲得と遠隔臓器への転移が予後不良の原因となるとされる。そのため、薬剤耐性を解除し、転移を抑えることが必要とされていた。

アルドケト還元酵素を阻害するフルフェナム酸により、抗がん剤の効きめが回復

同研究では、ヒト膀胱がん細胞UM-UC-3を蛍光でラベルをしてマウスの膀胱に移植し、膀胱がんモデルマウスを作成した。移植から45日後に、肺転移、肝臓転移、骨転移が確認されたため、原発巣としての膀胱、転移先としての肺、肝、骨からそれぞれがん細胞を取り出して原発巣と比べ、転移したがん細胞でのみ高い発現を示す分子について、mRNAマイクロアレイ法を用いて網羅的に検討した。その結果、転移したがん細胞ではアルドケト還元酵素が3倍から25倍に増加していることを発見。転移巣でのアルドケト還元酵素の増加は、実際の膀胱がん患者の手術症例25例の病理組織でも認められたという。

抗がん剤治療では、死滅したがん細胞の周囲で炎症が起こり、炎症性物質インターロイキン1を放出。これによりがん細胞内でアルドケト還元酵素の量が増加し、解毒作用が増強されて薬剤耐性を獲得する。さらに同研究で、アルドケト還元酵素ががん細胞の動きを司ることが明らかになった。フルフェナム酸はこのアルドケト還元酵素を阻害するため、フルフェナム酸を膀胱がん細胞に投与するとがん細胞の動きが止まり、抗がん剤の効果が回復することがわかったという。

同研究から、風邪薬などの安価な薬の成分でも思わぬ抗がん作用があることが明らかとなり、将来のがん治療現場への定着が期待されると、研究グループは述べている。

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