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奈良県敗訴確定 県立奈良病院時間外手当等請求事件

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2013年02月16日 AM12:13

医師の当直は時間外労働

奈良県立奈良病院の産婦人科医2名が、宿日直勤務は、割増賃金が支払われる「時間外労働」に当たるなどとして、時間外手当の支払いを県に求めていた裁判は、県の上告を退け約1500万円の支払いを命じる判決が最高裁で確定した。

この2名は、平成16年1月1日から平成17年12月31日までの宿日直勤務の間は、分娩やハイリスク妊娠患者に対する診療、救急外来患者に対する診療を行っており、労働基準法37条1項の時間外又は休日勤務に当たると主張。

また、この期間中、同病院の産婦人科では、この2名を含む5名の医師が勤務していたが、当直の医師1名では、急患などの対応ができないため、宿日直勤務以外に自主的に「宅直」当番を決めていた。

「宅直」当番の医師は、宿日直の医師だけでは対応が困難な場合、病院に駆けつけ宿日直医師に協力し診療を行っていた。この「宅直勤務」についても、割増賃金の対象となる労働時間に値すると主張していた。

(この画像はイメージです)

求められる労働環境の改善

平成22年4月の一審では、「宿日直勤務」については時間外割増賃金の支払いを命じ、「宅直勤務」については時間外労働として認めなかった

そのため双方が控訴。続く二審の大阪高裁も一審判決を支持し「当直は労働時間」と認定、県側と原告双方の控訴を棄却。一審と同様「宅直勤務」については、認めなかった。その後、県は平成22年11月に最高裁に上告していた。

奈良県では、独自に定めた条例の中で、断続的な勤務として

「県立医科大学付属病院又は県立病院における入院患者の病状の急変等に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務」

を定めているので、当直勤務は時間外労働に当たらず、また、

宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩件数は多くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くない
宅直は、原告ら奈良病院の産婦人科医師らが自主的に行っているものであり、命じているわけではないから,宅直時間は給与の支給の対象となる労働時間ではない

と反論していた。

休む間もなく働き続ける状態の当直

これに対し、一審・二審では、医師らは異常分娩や異常妊娠等に対する診療も昼夜を問わず多く、平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間、宿日直勤務時間中の24%の時間を通常業務に従事していたと指摘。

また「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは、

本来業務を処理するためのものではなく,構内巡視,文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもの等であって,常態としてほとんど労働する必要がない勤務

を指すのであって、この医師らのように、分娩・新生児・異常分娩治療、救急医療などを行う状態については、「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは言えないと指摘していた。(吉沢実香)

▼外部リンク

平成18(行ウ)第16号 時間外手当等請求事件  
平成21年04月22日 奈良地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090703144644.pdf

医師の宿日直勤務と労働基準法
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/s0425-6a.html

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