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新型コロナ、肺炎CT画像によるサーベイランスシステムを開発-順大ほか

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2022年11月02日 AM11:03

COVID-19肺炎所見を自動判定・集計するICT医療支援技術の開発は急務

順天堂大学は11月1日、)肺炎に対する、CT画像によるサーベイランスシステムを開発したと発表した。この研究は、国立情報通信研究機構()の委託研究の一環として、同大大学院医学研究科放射線診断学の青木茂樹教授、明石敏昭准教授らと、(NII)、名古屋大学が共同で行ったもの。研究成果は、「SPIE Medical Imaging 2022」で発表されているほか、論文や学会などで複数外部発表されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により引き起こされるCOVID-19のパンデミックは、医療サービスを供給するリソースの逼迫を招いている。これはCOVID-19患者への対応だけでなく、それ以外の受診者へも深刻な医療サービス水準の低下を引き起こしている。このような世界的な緊急事態では、平常時と同程度の医療サービス水準の維持に加え、緊急事態に対応した適切な医療サービスの迅速な供給が求められる。医療サービスを供給する第一のリソースである医師や看護師、技師などの人的資源を多数、かつ即座に確保することはとても困難だ。

ICTを活用した医療支援技術を速やかに開発して医療現場に迅速に投入できれば、限られた人的資源での対応状況の改善が見込めるようになる。例えば、日本全国の医療機関で撮影されているX線CT画像からCOVID-19肺炎所見を自動判定し、肺炎患者の日々の増減を自動で集計するシステムがあれば、今後必要となる人的資源の予測と確保が可能になる。このようなシステムを緊急時に迅速に開発するためには、画像を含めた医療情報を全国の医療機関から一元的に蓄積し活用するICTプラットフォームを常時稼働したうえで、平常時からICTによる医療支援技術を研究開発していなければ実現できない。

NIIでは、このようなAIによる医療支援技術を、COVID-19パンデミック以前の平常時から研究開発してきた。緊急事態に必要な医療支援を速やかに臨床現場へ提供できるように、ICTを活用した医療情報の蓄積と機械学習によるデータ解析の機能を統合したプラットフォームであるクラウド基盤を2017年に整備し、今日まで継続して運用している。

COVID-19肺炎CT画像の解析基盤と診断補助AIは開発済み

このプラットフォーム上で、NIIが同大と名古屋大学と共同で整備したCOVID-19肺炎CT画像の解析基盤と、その基盤を利用して研究開発した肺炎典型度を自動識別するCOVID-19診断補助AIがすでに開発されている。

同大では、日本医学放射線学会が開発して管理・運営している日本医用画像データベース(J-MID)に網羅的に蓄積したCT画像のうち、PCR検査によってCOVID-19と判明した症例を選別し、北米放射線学会(RSNA)が規定するCOVID-19肺炎の典型度分類に従ってCT画像を評価した。現在までに、画像および診断情報(アノテーション)からなるCOVID-19肺炎症例のデータ計1,553例を蓄積している。これらは「SINET」を通じてNIIのクラウド基盤に収集され、NIIではこのデータを用いてAI解析が迅速に行えるように必要な情報を抽出するワークフローを確立し、COVID-19肺炎のAI解析に最適化された学習データセットとして整備した。

名古屋大学では、この学習データセットを用いてCT画像からのRSNA典型度自動識別を行うCOVID-19診断補助AIを開発した。開発した手法は、学習データが20例と少ない場合においても従来手法より高い精度での肺野セグメンテーションが可能だった。

「3D CNN」を用いてCOVID-19肺炎の典型度を自動判定、集計するシステムを構築

今回の研究開発では、NIIのクラウド基盤の利点を活用し、日々クラウド基盤に送られてくる膨大な量のCT画像から肺野のみを選別してCOVID-19肺炎の典型度を判定、集計するサーベイランスシステムを構築した。

具体的には、判別AIに3D Convolutional Neural Network(3D CNN)を用いて自動判別を新たに実現した。3D CNNの実現にあたっては、CT画像のAxial、Coronal、Sagittal断面それぞれで並列的に画像特徴抽出を行い、それらを統合して3D画像の判別を行う機構を独自に開発。約83%の分類精度を実現した。

画像ベースで感染動態の判別や推定が可能に

COVID-19診断補助AIの実証実験用ソフトウェアを開発することで、クラウド基盤のCT画像に対して継続的にAIの自動判別結果を得ることを可能とした。これはクラウド基盤とCOVID-19診断補助AIを連携し、医療機関からクラウド基盤へ格納したCT画像に対して自動的にAIの各処理を適用し判別結果を得る仕組みだ。これにより、過去から現在までの多数のCT画像から自動的に感染例をカウントすることでCOVID-19の感染拡大状況の統計的データを取得可能とした。これは、画像ベースで感染動態の判別や推定を可能とするシステムだ。

今回のサーベイランスシステムを継続して運用することにより、CT画像上でウイルス性肺炎を疑わせる所見を認めるCOVID-19感染者の動態を予測することができる。発症の有無に関わらず、ウイルス陽性者を計測するPCR・抗原検査では、有病者数の算定は過去の経験に基づく発症率に依存する。発症率はウイルスの株や感染者の状態によって変化するため、有病者の実態をリアルタイムで追跡することは困難とされている。同サーベイランスは、CTでの画像所見を指標にしているため、発症率に関わらず肺炎患者の実態を追跡する。このことは、医療サービスの需要を予め見通すことにつながり、医療リソースの逼迫を回避することに役立つと考えられる。

臨床現場のニーズに迅速に対応できる医療AIの研究開発へ

今後、研究グループは、COVID-19診断補助AIの精度向上を図るためのアルゴリズム研究を進め、サーベイランスシステムの信頼性を上げていくとしている。また、網羅的データを毎日受け入れているクラウド環境は「育つデータベース(evergrowing database)」という特質があるため、「COVID-19以外の疾患のサーベイランスや臨床現場のニーズに迅速に対応できる医療AIを研究開発する態勢を整えていく予定だ」と、研究グループは述べている。

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