WHOが新型コロナ治療薬に関するガイドラインを更新
世界保健機関(WHO)はこのほどガイドラインを更新し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、中和抗体薬のソトロビマブ(商品名ゼビュディ)およびカシリビマブ/イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)を使用しないことを強く推奨した。このガイドラインは、「The BMJ」に9月4日掲載された。
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この推奨内容は、両薬剤に関するこれまでの条件付き推奨に置き換わるもの。ソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブの両中和抗体薬は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合することで、ウイルスの細胞への侵入を防ぐ効果があるとされている。しかし、現在流行中のオミクロン株に対しては効果が期待できないとのエビデンスが得られたことから、今回の変更に至った。米国では、変異株の出現によりいずれの薬剤も現在は推奨されていない。
さらに、抗ウイルス薬のレムデシビル(商品名ベクルリー)については、重症患者に対する使用を推奨する一方で、重篤患者への使用を推奨しないとした。この条件付きの推奨は、COVID-19の重症または重篤患者7,643人を対象とした5件のランダム化試験で、レムデシビルを投与した重症患者の死亡数が1,000人当たり13人少なかったのに対し、同薬を投与した重篤患者の死亡数は1,000人当たり34人多かったという結果を受けてのものである。
重症患者と重篤患者に対しては、関節炎治療薬とコルチコステロイドを併用する治療が可能である。WHOが推奨する関節炎治療薬は、IL-6受容体阻害薬のトシリズマブ(商品名アクテムラ)またはサリルマブ(商品名ケブザラ)とJAK阻害薬のバリシチニブ(商品名オルミエント)である。確実性の高い試験(RECOVERY試験)により得られたエビデンスから、バリシチニブとコルチコステロイドおよびIL-6受容体阻害薬の併用が生存率にベネフィットをもたらすことが明らかにされている。しかし、バリシチニブは高額な薬剤であることから、健康格差を広げる可能性があるとWHOは指摘している。
一方、ハイリスクの非重症患者に対しては、これまでのガイドラインと同様、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名パキロビッド)を強く推奨し、条件付きでモルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)とレムデシビルを推奨している。またWHOは、重症度にかかわらず、COVID-19患者に対するイベルメクチン(商品名ストロメクトール)およびヒドロキシクロロキン(商品名プラケニル)の使用は推奨していない。
▼外部リンク
・A living WHO guideline on drugs for covid-19
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