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薬剤を6倍超の濃度で誤投与、腎機能障害の心不全成人患者死亡-京大病院

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2019年11月20日 PM04:15

ミスが重なったうえに患者の訴えを的確に受け止められず

京都大学医学部附属病院は11月19日、炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡に関し、記者会見を行ったことを発表した。内容は、以下の通り。

京大病院に入院していた腎機能障害をもつ心不全の成人男性の患者に対し、造影剤を用いた CT 検査による腎機能への副作用を軽減させるため、注射薬である炭酸水素ナトリウムを処方した。その際、本来投与すべき薬剤の6.7倍の濃度の同一成分製剤(商品名:メイロン)を誤って処方し、これを投与した結果、心停止をきたした。蘇生処置により心拍は再開したが、心臓マッサージに伴う胸骨の圧迫が原因と思われる肺からの出血をきたし、その後も出血傾向が止まらず、患者はその6日後に死亡した。

同院が、外部の専門家を含む医療事故調査委員会を立ち上げ、医療事故を起こすに至った問題点の分析を行った結果、同事件に関して重大と捉えられる4つの問題点が挙げられた。

(1) 腎機能障害患者に対する造影CT検査において安全への配慮が不足しており、誤処方という事故につながった。

(2)患者は炭酸水素ナトリウムの点滴開始直後から血管の痛みを訴え、その後も、血管痛、顔面の火照り、首のしびれ、首がつる、手足がつるといった症状や、「医師を呼んでほしい」などの訴えが何度もあった。看護師から患者の訴えについて医師には報告があったが、看護師や医師は造影剤によるアレルギー反応の有無に気をとられて、誤った濃度の炭酸水素ナトリウムが多量に投与されていることには気づかず、患者の訴えについて、医師の診察が行われないまま投与が継続された。

(3)心停止をきたし、蘇生のための心臓マッサージを行っている最中に、肺損傷が原因と思われる出血をきたすようになった。その後、止血術など出血への対応が行われたが、患者が服用している内服薬の中に抗凝固薬が含まれていることに気づくのが遅れ、抗凝固薬に対する中和薬を事故発生後早期に投与することができていなかった。

(4)腎機能障害患者における造影CT検査体制に関するマニュアルはあったものの、その内容が十分に定着していなかったという安全管理上の不備があった。

京大病院の宮本享病院長は、以下のようにコメントしている。

「京大病院における治療でよくなられることを望んでおられた患者さんご本人そしてご家族には、薬剤の誤った処方による死亡という、期待を裏切るような結果になりましたことは誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。また、京大病院で治療を受けられておられる皆様にもご心配をおかけしますこと誠に申し訳なく存じます。関係者のみならず病院職員の一人ひとりが自分たちのこととして受け止め、再発防止に努めてまいります。」

今回の医療事故の検証や再発防止策に関する詳細は、下記関連リンクに記載されている。

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