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【がん研究センター】希少がん薬を産学共同開発-製薬11社が参加、世界初の計画

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2017年08月02日 AM10:30


■患者登録とバスケット試験

国立がん研究センター中央病院は7月31日、希少がんのゲノム医療と新薬開発を産学共同で進める世界初のプロジェクト「MASTER KEY」を開始したと発表した。希少がん患者を登録して遺伝子情報を把握するレジストリ研究を進めると共に、特定のバイオマーカーを持つ患者集団を対象に実施する“バスケット試験”と呼ばれる新たな手法を駆使し、希少がん治療薬の開発につなげる。プロジェクトは製薬企業11社が参加し、今年度中には京都大学病院でも開始する予定。年100例以上の登録を予定している。

希少がんは、厚生労働省の検討会で罹患率人口10万人に6例未満とされ、標準治療も存在しないアンメットメディカルニーズが高い疾患と位置づけられているが、患者数が少ないため診療データが蓄積されておらず、臨床試験の実施が難しい課題があった。そのため、これまで多くの製薬企業は希少がんの抗癌剤開発を積極的に行ってこなかった。

こうした中、同センターは2014年に「希少がんセンター」を設置し、希少がん患者に対する診療と臨床試験を実施してきた。15年には遺伝子検査室を設置してゲノム医療の実装にも取り組んできた。今回、さらに希少がんのゲノム医療を加速させるため、製薬企業11社の参加を得て、産学共同で新薬開発を目指すプロジェクトを立ち上げた。

プロジェクトは二つの柱からなり、まず16歳以上の固形希少がん患者を前向きに登録し、遺伝子情報や診療情報、予後データなどを把握するデータベース作りのためのレジストリ研究を行う。遺伝子検査のみならず、免疫染色やFISH法など、あらゆる検査を駆使して希少がんの全容を明らかにしたい考え。

その上で、レジストリに登録された患者の遺伝子情報などに基づき、特定のバイオマーカーごとに分子標的薬を投与する医師主導治験、企業治験を実施し、希少がんの治療薬開発につなげる。臨床試験はバスケット型デザインと呼ばれる新しい手法で行われ、癌種を限定せず、特定のバイオマーカーごとに臨床試験の対象を決め、その患者集団に特異的な効果を発揮する薬を投与する。特定のバイオマーカーがない場合は、より広い対象に効果が期待できる薬を用いる。

レジストリ研究の予定登録数は年間100例としている。既に5月10日から登録を開始し、7月25日時点で61例と想定以上の早いペースで登録が進んでいるという。今後、対象患者を1歳以上、血液癌に拡大していく予定である。

研究事務局を担当する同センター中央病院乳腺・腫瘍内科の米森勧医長は、「希少がん患者の診療向上につながる社会貢献という意味で、もっとプロジェクトの意義を知っていただき、さらに多くの企業に参加してもらいたい」と呼びかけている。今年度中には、京都大学病院でも開始予定で、さらに臨床研究中核病院などにプロジェクトを拡大し、ネットワーク化することにより、全国の希少がん患者に等しくゲノム医療を提供していきたい考えだ。

プロジェクトに参加する製薬企業は、アステラス製薬、、杏林製薬、、大鵬薬品、、中外製薬、、ファイザー、ブリストル・マイヤーズスクイブ。

 

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