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震災後2年目の太平洋沿岸部で継続して高い抑うつ傾向が見られることを報告-東北大

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2015年06月12日 PM12:00

約7千人分の地域住民コホート調査の結果

東北大学は6月10日、同大学東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査の結果を発表した。同調査は、2013年度に宮城県内の特定健診会場で協力した約7千人分についての分析で、抑うつ症状によるものである。


画像はリリースより

東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興事業として計画され、宮城県では東北大学、岩手県では岩手医科大学が事業主体となり、15万人の参加を目標とした長期健康調査(地域住民コホート調査:8万人、三世代コホート調査:7万人)を実施している。東北大学では、東北メディカル・メガバンク機構を2012年2月に設立し、翌年5月から地域住民コホート調査を開始している。

抑うつ傾向やPTSR有病率は、内陸部と比べ沿岸部で高い結果に

今回、調査票への回答からメンタル面における影響を分析。CES-D(抑うつ傾向)などの国際的な指標を用いた評価を行うと共に、それぞれの人の震災体験や喪失体験についての質問を行ったという。

結果として、有効な回答を得た7,285人のうち、28%の住民で抑うつ傾向があることが分かった。内陸部と比べ沿岸部での有病率が高く、性・ 年齢を調整したオッズ比は1.4倍だったという。また、今回の調査対象者で、東日本大震災を思い出すことによる苦痛で生活に支障、または影響が出ていると回答した者が4%にのぼり、PTSRにより生活に支障が出ていると感じていることが示唆された。PTSRの有病率も沿岸部で2.4倍と、内陸部よりも高くなっていたという。これらのことから、沿岸部においてメンタルに対するサポートの重要性が裏付けられたと考えられる。

同機構では、特に心理的な指標で問題を抱えた人々に対して、心理士による電話や面談による支援を行っており、支援実施はこれまでで延べ600人以上にのぼっている。一方で、既に報告されている震災後急増した心不全による入院の影響から、増加が懸念されていた潜在性心不全の割合やヘリコバクター・ピロリ菌の感染者は、内陸部と沿岸部でその割合に差がないことが明らかになった。

同機構では今後、コホート調査の結果の分析をさらに進め、震災後の住民の心身の健康に影響を及ぼしている身体的・心理的・社会的な諸要因を明らかにし、支援や復興策の充実に結びつけていきたいとしている。

▼外部リンク
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 プレスリリース

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