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早期の介入で精神疾患を予防できるか

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2013年04月30日 PM08:13

臨界期がある

東北大学の研究グループが精神疾患発症惰弱性には臨界期があり、早期の環境的介入が発症を予防する可能性があることを証明した。

統合失調症などの精神疾患は感覚のフィルター機構に障害がある。ある大きさの音をあらかじめ聞いた後に、もっと大きな音を聞くと驚愕反応が減少する。この減少はプレパルス抑制(PPI)で、統合失調症ではPPIに異常がみられることが多い。また、海馬における神経新生は記憶や学習、多動や不安に影響を与えるが、ストレスや低栄養の環境要因で低下するとマウスで証明されている。 

研究グループは神経新生を低下させるメチルアゾキシメタノール酢酸(MAM)を投与してPPI低下を示す統合失調症モデルマウスを作製、統合失調症を発症する発達時期の特異性を調べた。発達途中のマウス(3~6週齢)にMAMを2週間だけ投与後、10週齢でPPI試験を行った結果、3週齢、4週齢にMAMを投与したマウスのみにPPIの異常が認められ、18週齢になっても低下したままだった。MAMの効果には時期特異的な感受性があり、PPIの異常は持続的だった。

また異常があったマウスは短期記憶を司る海馬歯状回の抑制性の神経細胞(他の神経細胞の働きを抑える神経細胞)が減少したため、抑制性の神経回路の機能の低下がPPIの異常を引き起こすことが明らかになった。以上から、統合失調症様の発症に発達時期特異性(臨界期)があり、発症に抑制性の神経細胞が関与するとわかった。

環境的に介入する時期に意味がある

回転車や遊具などのある変化に富んだ環境で4週齢と6週齢の統合失調症モデルマウスをそれぞれ10週齢まで飼育した。4週齢からの飼育ではPPIの異常が改善したが、6週齢からでは改善しなかった。つまり限られた時期の環境介入が統合失調症様の異常行動発症を予防する効果があるといえる。

幼若期でも脳は発達過程にあり、この時期の神経回路発達の不全が成人期の精神症患発症惰弱性に関わる。神経新生はストレス、低栄養などに影響されるから、幼若期に脳の発達の障害が生じた場合、早期に介入する必要性があると考えられる。(馬野鈴草)

▼外部リンク

東北大学プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/

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