医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 死んだ細胞の貪食に関与するタンパク質を発見 全身性エリテマトーデスの治療に可能性

死んだ細胞の貪食に関与するタンパク質を発見 全身性エリテマトーデスの治療に可能性

読了時間:約 1分18秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2013年03月11日 PM08:13

マクロファージの貪食を促進するタンパク質

生体内で死んだ細胞を取り込むマクロファージなど貪食細胞には死んだ細胞の内容物の流出を防ぎ、生体の恒常性を維持する役割がある。、徳島大学の研究グループはアポトーシス細胞の貪食に関与するタンパク質GRK6を突き止めた。このタンパク質を欠損したマウスが全身性エリテマトーデス様や鉄過剰症様を発症したことから今回の知見がこれらの疾患の治療に関わることが期待される。

生体内で不要になった細胞や有害な細胞はアポトーシスを起こして死んだ細胞となり、マクロファージなどの貪食細胞に食べられて消失する。貪食細胞は死んだ細胞を取り込むために形状を変化させるが、この変化を引き起こすメカニズムはわからなかった。

研究グループはリン酸化酵素GRK6に着目し、この酵素がさまざまなマクロファージに発現して貪食細胞の形状変化を促進する作用をもつことを発見した。さらにこの作用ではこれまでに知られていた形状変化の促進経路とは異なる新たな経路を介していた。

欠損すると全身性エリテマトーデス、鉄過剰症を発症

脾臓は白脾臓でアポトーシスを起こした細胞を除去し、赤脾髄で死んだ赤血球を除去している。いずれのマクロファージにもGRK6が多く発現していたため、マウス実験でGRK6の働きを調べたところ、これが欠損すると貪食されずに残ったアポトーシス細胞が全身性エリテマトーデス様や鉄過剰症様の症状を呈したことが明らかになった。つまり、アポトーシス細胞の貪食を通じてGRK6がこれらの発症に関与する可能性がある。アポトーシス細胞の貪食能をGRK6の制御で調節すれば新たな治療法が展開すると考えられる。(馬野鈴草)

:細胞の核成分に対する抗体を中心に自己抗体が作られて臓器が侵される。原因不明の炎症が全身の臓器に発症する。膠原病の一つに分類される。

鉄過剰症:鉄が過剰に蓄積されて発症する。鉄が肝臓、脾臓に滞留する血鉄症と貯蔵鉄が肝臓、、皮膚に沈着するヘモクロマトーシスがある。

▼外部リンク

九州大学
http://www.kyushu-u.ac.jp/

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • OTULIN関連自己炎症症候群の常染色体顕性遺伝形式発症を確認、世界初-横浜市大ほか
  • 膵がん、線維化形成に関与するタンパク質ROCK2を同定-岡山大ほか
  • EYS関連網膜色素変性に視細胞変性への光暴露が関与、ヒトiPS細胞で解明-理研ほか
  • NGLY1欠損症、オキシトシン治療でモデルマウスのけいれん様症状抑制-理研ほか
  • 汗孔角化症、FDFT1遺伝子のエピゲノム異常が発症に関わることを発見-神戸大ほか