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日本人のアトピー性皮膚炎、新たな遺伝的因子を複数同定-理研ほか

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2021年06月10日 AM11:45

アトピー性皮膚炎は、アジア人の病態に関わるSNPが未同定だった

(理研)は6月9日、日本人のアトピー性皮膚炎を対象にした大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、アトピー性皮膚炎の病態に関わる新しい遺伝因子を特定したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー(静岡県立総合病院免疫研究部長、静岡県立大学特任教授)、田中奈緒大学院生リサーチ・アソシエイト、自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーらの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

アトピー性皮膚炎は、世界的に発症頻度の高いアレルギー性疾患であり、その高い遺伝率から遺伝的要因が病態形成に大きく影響すると考えられている。近年、他の多くの疾患と同様にアトピー性皮膚炎に対してもGWASなどの遺伝学的解析が行われており、アトピー性皮膚炎の疾患関連領域が多く同定されているが、アトピー性皮膚炎の遺伝学的背景を説明する材料としては不十分だった。特に、アジア人の解析で同定された疾患関連領域は少なく、その中でも特に病態に関わる一塩基多型()は特定されていなかった。

そこで、研究グループは日本人を対象に大規模なGWASを行い、さらにUKバイオバンクのGWAS結果を用いてメタ解析を行うことで、新たな疾患関連領域を探索した。

インピュテーション用の参考配列に日本人特有の低頻度バリアントを多く含め解析

GWAS実施の対象としたのは、バイオバンク・ジャパン(BBJ)の登録者のうち、アトピー性皮膚炎患者2,639人とコントロール群11万5648人(計11万8287人)。その際、インピュテーション法(DNAマイクロアレイのデータからさらに多くの遺伝的バリアントの情報を推定する方法)の精度を上げるため、インピュテーション法に用いる参考配列を約3,000人分の日本人特有の低頻度、あるいはまれな遺伝的バリアントを多く含むデータにした。これにより、従来よりも多くの遺伝的バリアントを解析対象とすることができた。

新たな疾患関連領域を4つ同定し、日本人でIL13やSMAD4の関連も確認

解析の結果、過去に行われたBBJのアトピー性皮膚炎のGWASよりも9個多い、17個の疾患関連領域を同定。そのうち、4領域(AFF1、ITGB8、EHMT1、EGR2)はこれまで報告されていないものだった。今回新たに同定した疾患関連領域中のSNPは、ヨーロッパ人では極めて頻度が低く、日本人においても頻度が低かったことから、日本人の大規模解析を行ったからこそ見つけられた関連領域であると考えられた。ほかにも、これまでヨーロッパ人の解析では報告されたものの、アジア人では不明だったIL13などの領域にも関連が見出され、ヨーロッパ人とアジア人で疾患発症に関わる共通の遺伝的背景が明らかとなった。遺伝子単位で遺伝的バリアントの情報を統合したうえで解析したところ、免疫に関わる重要な転写因子SMAD4も疾患に関連することがわかった。

UKバイオバンクのGWAS結果とのメタ解析でさらに新規4領域を同定

また、UKバイオバンクのデータとともにメタ解析を行った結果、さらに新たな疾患関連領域として4領域(ZBTB38、LOC105755953/LOC101928272、TRAF3、IQGAP1)を同定。これらは、ヨーロッパ人集団と共通した疾患関連領域であるために見つかったと考えられた。

NLRP10領域のミスセンス変異が病態に影響の可能性

次に、これらの疾患関連領域のうちSNPが影響を及ぼす疾患関連メカニズムを調べたところ、自然免疫に関連するNLRP10領域にアミノ酸配列に変化を起こすミスセンス変異があった。このミスセンス変異が存在するNACHTドメインは、過去に免疫反応に重要な転写因子TNIP1の結合部位として報告されており、このドメイン内の変異がアトピー性皮膚炎における免疫反応にも影響を持つ可能性が示された。

機械学習による解析で、皮膚細胞に影響するCCDC80エンハンサー領域のSNPを発見

また、理研の研究チームが2020年に開発した機械学習の手法を用いて、遺伝制御領域の活性に影響を与えるSNPを調べた。この手法では、従来の遺伝子発現とSNPの関連解析(eQTL)では検索しきれないまれな多型について、FANTOM5プロジェクトで同定された遺伝子制御領域の活性への直接的な効果を細胞種ごとに推測できる。

今回、日本人のアトピー性皮膚炎との関連があったSNPに、CCDC80領域のエンハンサーに重なるものが複数存在したが、機械学習による解析からそのエンハンサー活性を変化させるSNP(rs12637953)があることがわかり、その影響は皮膚細胞で認められた。CCDC80は皮膚や脂肪組織内の酸化反応に関わるタンパク質で、マウスのアトピー性皮膚炎のモデルにおいて、アレルギー反応の発生に関わることが報告されている。また実際に、実験でこのSNPが近隣のプロモーターの発現を変化させることも示された。このように、rs12637953が遺伝子制御領域の発現調整を介することで、疾患と関わることが示唆された。

NLRP10・CCDC80領域のSNPは「日本人の」発症に関わる可能性が高い

NLRP10領域とCCDC80領域は、過去にも日本人のGWASでのみ疾患との関連が認められた領域。また、今回同定したこの2つのSNPに関しては、日本人とヨーロッパ人との間に頻度差があり、日本人では頻度が高いのに対して、ヨーロッパ人では非常にまれであることがわかった。これらのことから、この2つのSNPは日本人のアトピー性皮膚炎の発症に関わる可能性が高いと考えられた。

T細胞やケラチノサイトでの、SNPが影響する遺伝子発現が発症に関与

1つのSNPレベルで疾患に関わるものを特定した一方で、全てのSNPの影響を総合的に評価すると、日本人とヨーロッパ人に共通して、アトピー性皮膚炎に関連する遺伝的多型が免疫細胞のCD4 T細胞の遺伝制御領域に集積していることがわかった。また、両人種のGWASから見つかった疾患関連領域が、CD4 T細胞および皮膚のケラチノサイト(角化細胞)のエンハンサー領域と重なることがわかった。さらにパスウェイ解析においても、CD4 T細胞関連のパスウェイと関連があることがわかった。CD4 T細胞やケラチノサイトは、アトピー性皮膚炎の病態にとって主要な細胞と考えられてきたが、遺伝要因の関与は明確にはわかっていなかった。この結果により、CD4 T細胞やケラチノサイトでの遺伝子発現が、アトピー性皮膚炎の発症に関わることが示唆された。

CD4 TでIL18R1↓、NKでIL18R1↑、好中球でIL18RAP↓が発症リスクに

また、多型によって規定される細胞ごとの遺伝子発現を全ゲノム領域において推定し、それらがアトピー性皮膚炎の発症と関連があるかどうかを調べるトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)を実施。その結果、複数の血液細胞(CD4、NK、好中球)におけるIL18受容体(IL18R)の発現量の違いが疾患に関わることがわかった。IL18受容体の種類や効果量は、細胞によって異なった。IL18は慢性炎症期や自然免疫において重要な役割を担うことが知られており、アトピー性皮膚炎にも影響すると推測されていた。IL18R領域はこれまでのGWASでも関連があることが知られていたが、その詳細は不明だった。

今回、複数の遺伝的要因によってIL18Rの発現量が変わり、その違いを介してアトピー性皮膚炎に関わることが示唆され、細胞種によってさまざまなパターンをとることがわかった。具体的には、CD4 T細胞におけるIL18R1の減少、NK細胞におけるIL18R1の増加、好中球におけるIL18RAPの減少がアトピー性皮膚炎の発症リスクにつながることがわかった。

さらなる解析で治療標的の同定に期待

以上のように、日本人とヨーロッパ人に共通して、Th1、Th2、Th17といったCD4 T細胞やケラチノサイトに関連する遺伝的要因がアトピー性皮膚炎の発症に関わっていること、また日本人においては、NLRP10、、IL18受容体が重要であることが判明した。

今回の研究では、インピュテーション法などのGWASの手法を改善することで、日本人における新たなアトピー性皮膚炎の疾患関連領域が同定された。また、単に疾患関連領域の同定だけでなく、遺伝的に疾患に関連する細胞やタンパク質も同定された。研究グループは、「今後、さらにアトピー性皮膚炎の遺伝学的要因を調べていくことで、治療標的となりうる病態が解明されると期待できる」と、述べている。(QLifePro編集部)

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