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ウェルナー症候群の診療GL、世界の治療標準化に向け英語版で発表-千葉大ほか

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2021年01月21日 AM11:30

世界の報告の6割を日本人が占める遺伝性早老症

千葉大学は1月20日、遺伝性早老症「」の診療ガイドラインを発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の横手幸太郎教授(千葉大学医学部附属病院病院長)、国際医療福祉大学医学部の竹本稔主任教授らを中心とした国内8機関14名からなる研究グループによるもの。研究成果は、日本老年医学会の公式英文誌「Geriatrics&Gerontology International」に掲載されている。


画像はリリースより

ウェルナー症候群は、20歳代から白髪、脱毛、両目の白内障が生じ、手足の筋肉や皮膚がやせて固くなるなど、急速に老化が進んでいくような症状が現れることから、早老症のひとつとされている。国内の推定患者数は推計700~2,000人とされ、世界の報告の6割を日本人が占める、日本に多い病気だ。平成27年(2015年)5月には、指定難病に認定されている。

1996年に、ウェルナー症候群の原因遺伝子が同定されたが、その早老機序は十分には明らかになっておらず、根本的な治療法はまだない。かつては、多くのウェルナー症候群患者が40歳代で悪性腫瘍や心筋梗塞などにより亡くなっていたが、治療法の進歩により、今では寿命が50~60歳代の患者もいる。寿命は延びたものの、糖尿病、脂質異常症などの代謝性疾患、、悪性腫瘍(主に肉腫)を合併することが多い。加えて、難治性の皮膚潰瘍が好発するため、その疼痛や感染症によって生命予後や生活の質(QOL)を大きく損なっている。

また、希少疾患であるために、ウェルナー症候群との診断に至らない症例や、診断を受けても適切に治療を受けられていない例も多く見受けられ、なお多くの患者が苦労を強いられている。

ウェルナー症候群に合併する8項目、最新の治療経験などを追加

今回、研究グループはウェルナー症候群に合併する8項目(「脂質異常症、脂肪肝」「サルコペニア」「糖尿病」「骨粗鬆症」「感染症」「皮膚潰瘍(皮膚科治療)」「下肢潰瘍(形成外科治療)」「アキレス腱石灰化」)に関して、2012年に発表した日本語版の診療ガイドラインに1996年~2020年までの臨床論文のシステマティックレビューや最新の治療経験を加え、より実臨床に即した診療ガイドライン(management guideline)を作成し、世界で初めて英文で発表した。

この診療ガイドラインが用いられることにで、日本国内のみならず世界中のウェルナー症候群の治療が標準化され、患者の生命予後やQOL向上への寄与が期待されるという。

現在、日本医療研究開発機構研究費(難治性疾患実用化研究事業)で行われている「早老症レジストリー」(研究代表者:横手幸太郎)では多数の患者の臨床経過が経時的に登録されている。このような早老症レジストリーは世界的にも数少ないものであり、同研究との情報共有により、同疾患の病態解明・治療法開発に貢献するのみならず、ヒトの「老化」や「加齢とともに増える疾患(動脈硬化、がん、糖尿病など)」の科学的理解にも有益な情報をもたらさすことが期待される、と研究グループは述べている。

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