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イントロン領域の複合ヘテロ接合性変異によるAR-STAT1完全欠損症を同定-広島大ほか

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2020年07月13日 PM12:00

PID患者の3分の2はWES実施でも遺伝子診断に至らず、診断法の確立が課題

広島大学は7月10日、イントロン領域の複合ヘテロ接合性変異による常染色体劣性STAT1完全欠損症(AR-STAT1完全欠損症)を、世界に先駆けて同定することに成功し、遺伝性疾患の診断におけるターゲットRNAシークエンスを用いた遺伝子発現解析の有用性を提唱したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科小児科学の岡田賢教授、小林正夫名誉教授、坂田園子大学院生らと、、かずさDNA研究所の小原收氏、ロックフェラー大学のSt. Giles Laboratory of Human Genetics of Infectious Diseasesの研究グループによるもの。研究成果は、「International Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

)は、現在までに400種類近くの疾患が知られ、いずれも稀な疾患であるため、診断に苦慮することが少なくない。近年多くの原因遺伝子が解明され、迅速で正確な診断に遺伝子検査が重要な役割を果たしている。

特に、網羅的な遺伝子解析を実現した「全エクソーム解析()」の導入により、今まで未診断であったPID患者の約3分の1において、遺伝子解析による診断が可能となった。一方で、残りの約3分の2のPID患者はWESを実施しても遺伝子診断に至らず、これらの未診断患者における診断法の確立が課題とされてきた。

ウイルスなどによる重篤な感染症を繰り返すAR-STAT1完全欠損症

今回の研究対象であるSTAT1遺伝子は、PID発症に関与する遺伝子の1つで、インターフェロン-α/β、-γ(IFN-α/β、-γ)のシグナル伝達を行い、宿主の感染防御を担う。IFN-α/βはウイルスに対する生体防御に必須であり、IFN-γはマイコバクテリアなどの細胞内に寄生する細菌に対する感染防御に必要である。

STAT1は、IFN-α/β、-γの刺激によりリン酸化を受けて活性化し、抗ウイルス活性、抗マイコバクテリア活性を持つ遺伝子群の転写を誘導する。AR- 完全欠損症では、STAT1遺伝子の機能が完全に失われ、IFNα/β、-γの経路が全て障害される。そのため患者は、ウイルス、マイコバクテリアによる重篤な感染症を繰り返し、致死的な経過をたどる。同症は極めて稀で、世界で5家系7症例しか報告されておらず、国内での報告はない。非常に予後不良の疾患だが、造血幹細胞移植により根治が見込めるため、早期診断による適切な治療介入を行うことが重要となる。

STAT1遺伝子のイントロン領域に、父由来と母由来の2つの変異を有する症例

研究グループは今回、BCG接種後に播種性BCG感染症を発症した症例を経験し、原因検索のためWESを実施。その結果、STAT1遺伝子のヘテロ接合性変異(c.128+2 T>G)が同定されたが、無症状の母親も同一の変異を有していたことから原因究明には至らなかった。次に、ターゲット RNAシークエンスによる遺伝子発現解析を実施。その結果、患者ではSTAT1遺伝子の発現が著明に低下していることを発見した。得られた結果に基づき、WESデータを再解析したところ、STAT1 遺伝子ヘテロ接合性変異(c.542-8 A>G)を同定することができた。この変異は、STAT1遺伝子のイントロン領域に存在していたことから、最初の解析で見逃されていたことが判明。患者の父親でも同一の変異が同定され、患者はSTAT1遺伝子のイントロン領域に、父由来(c.542-8 A>G)と母由来(c.128+2 T>G)の2つの変異(複合へテロ接合性変異)を有することが明らかになった。

同症例で同定された2つのイントロン変異は過去に報告がない新しい変異だったため、それらの病的意義を確認するために、STAT1の機能に及ぼす影響を検証。その結果、これら2つのイントロン変異が、STAT1のタンパク発現に影響を及ぼすことが明らかになった。実際、患者の血液細胞では、STAT1タンパクが欠損していた。それにより患者の血液細胞は、IFN-γおよびIFN-α刺激に対する反応が著しく障害されていた。研究グループは以上の結果から、同定された2つのイントロン変異は有害変異と判断し、AR-STAT1完全欠損症と診断した。患者は経過中に、重症ウイルス感染症や播種性のマイコバクテリア感染症を反復しており、臨床的にも同診断と合致すると判断したという。

WESで診断確定に至らないPIDにターゲットRNAシークエンス導入で、診断率向上・早期診断治療に貢献できる可能性

今回の研究では、イントロン領域の変異を原因とする世界初のAR-STAT1完全欠損症の症例を同定することに成功した。WESによって診断確定に至らないPID症例に対して、ターゲットRNAシークエンスを導入することで、診断率が向上し、早期診断治療に貢献できる可能性が示された、と研究グループは述べている。

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