医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医薬品・医療機器 > エボラ出血熱治療薬の開発資金調達にクラウドファンディングを活用-北大

エボラ出血熱治療薬の開発資金調達にクラウドファンディングを活用-北大

読了時間:約 1分39秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年01月30日 PM01:30

公的に承認された有効な治療薬がないエボラ出血熱

北海道大学は1月28日、エボラ出血熱治療薬の開発に必要な支援金の募集を、READYFOR株式会社が運営するクラウドファンディングサービス「Readyfor」にて、2月1日より開始すると発表した。これは、同大人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人教授が、「致死率最大90%にもおよぶ『』治療薬開発の一歩へ」という募集タイトルで実施するもの。目標金額は370万円、募集期間は2019年2月1日~3月29日23時まで。


画像はリリースより

エボラ出血熱は1976年に初めて集団感染が確認されて以降、アフリカで散発的な流行を繰り返している致死率の非常に高い感染症。2013年から2016年にかけての西アフリカでの流行では、1万人以上が死亡した。しかし、エボラ出血熱には使用が公的に承認された有効な治療薬がない。未承認薬の抗体医薬が最も効果があるとされ、感染者への投与が試されているが、非常に高価である上に、低温での保存が必要なため、アフリカの流行地で使用するのには限界があるという。

また、ヒトやサルに感染するエボラウイルスは5種類あり、そのうち1種類に効く抗体をもとに治療薬の開発が試みられているが、5種類全てに効く抗体は発見されていない。

安価で常温保存が可能な飲み薬の開発を目指し

北大人獣共通感染症リサーチセンターは、世界で初めてエボラウイルス5種類全てに効く抗体を発見。さらに、その後の研究により、この抗体と同じ作用を持つ化合物を発見した。エボラの流行拡大を阻止するためには、今回発見した「治る可能性が高い化合物」を可能な限り早く「薬」にする必要がある。この化合物は、エボラウイルスが細胞に侵入する過程を強力に抑える低分子化合物で、基礎研究段階を終えて非臨床試験段階に入ろうとしている。非臨床試験をクリアすれば、次はヒトへの投与(臨床試験)となるが、必要な研究資金が不足しているため、クラウドファンディングサービスにて支援金を募集することになったという。

ウイルス感染を防ぐ手立てとして「ワクチン」と「薬」がある。ワクチンは感染予防に有効だが、いつどこで発生するか予測できないエボラにおいては、全てのアフリカ在住者に接種することが難しく、使い道が限られてしまう。そのため、感染した人を治療する薬(抗ウイルス剤)の方が現実的と考えられる。

研究グループは「安価で長持ちする飲み薬(抗ウイルス剤)であれば、医療設備や医師が十分でないアフリカでの普及にも適している。飲み薬が完成すれば、最もエボラウイルスに近い場所に住んでいるアフリカの人たちが、いつでも治療薬を飲める世の中への第一歩になる」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医薬品・医療機器

  • アレセンサ、ALK陽性早期非小細胞肺がん初の術後補助療法でFDA承認-中外
  • 全身型重症筋無力症治療薬ヒフデュラ配合皮下注を発売-アルジェニクス
  • バビースモ、網膜色素線条P3試験で主要評価項目達成-中外
  • 婦人科疾患の診断や不妊治療に有用な免疫検査パネルを発売-シスメックスほか
  • 新型コロナの次世代 mRNA ワクチン「コスタイベ筋注用」、国内第Ⅲ相試験で既存オミクロン株対応2価ワクチンに対する優越性検証を達成-Meiji Seika ファルマ