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1型糖尿病患者のさらなる血糖改善を目指し、合併症の進展抑制へ-SGLT2阻害剤の適応追加で

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2019年01月21日 PM02:00

厳格な血糖コントロールの課題は、低血糖リスク

選択的SGLT2阻害剤「(R)錠」(一般名:イプラグリフロジンL-プロリン)を製造販売するアステラス製薬株式会社と寿製薬株式会社は、2018年12月に同剤が1型糖尿病の効能・効果と用法・用量追加の承認を取得したことを受け、2019年1月17日、アステラス製薬本社においてプレスセミナーを開催。川崎医科大学・川崎医療福祉大学特任教授の加来浩平氏が講演した。


川崎医科大学・川崎医療福祉大学特任教授
加来浩平氏

1型糖尿病は、膵β細胞が破壊されることにより、絶対的インスリン欠乏に陥る疾患で、インスリン治療が必須だ。日本国内における患者数はおよそ115,000人。発症のピークが10~14歳にあり、患者は長期に渡る治療継続を余儀なくされる。治療が長期化することによる弊害は、合併症の進展だ。特に糖尿病性腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害の細小血管障害は、血糖依存的に進展するため、進展抑制には厳格な血糖コントロールが求められる。

しかし、厳格な血糖コントロールは合併症の進展を抑制する一方で、低血糖のリスクと背中合わせだ。『糖尿病治療ガイド2018-2019』で合併症予防の目標として推奨されているHbA1c 7.0未満を目指し、薬物療法による厳格な血糖コントロールを徹底すると、患者によっては重度の低血糖を起こすことがあると加来氏は指摘する。このため、1型糖尿病患者では7.0以上、8.0未満でコントロールされているケースが多いという。

SGLT2阻害剤併用では、ケトアシドーシスと低血糖に注意を

2014年に2型糖尿病を効能・効果として販売されたSGLT2阻害剤のスーグラは、血中のブドウ糖を尿中に排出することで血糖低下効果をもたらす。上市から5年を経たいま、2型糖尿病の病態を総合的・多面的に改善する薬剤として用いられている。同剤の1型糖尿病患者を対象とした臨床試験では、HbA1c値の改善効果、空腹時血糖値の改善効果、併用総インスリン1日投与単位数の削減効果が認められ、この度の適応追加に至った。

インスリン治療が必須の1型糖尿病患者に対して同剤を併用することで、臨床試験で確かめられた効果に加え、低血糖の重症化抑制や血糖変動の改善も期待できる可能性があると加来氏。これらについては、今後の検証が求められるという。一方で、1型糖尿病患者に同剤を併用するうえでの注意点については、加来氏は「インスリンを減量しなければ低血糖の発現リスクが高まる可能性があることと、インスリンを減量しすぎてしまうとケトアシドーシスのリスクを高めてしまう可能性があること」を挙げる。併用により、血糖降下作用が過ぎれば低血糖を起こす。さらに、グルコースが尿中へ排泄される過程で、脂肪酸の代謝が亢進されてケトン体が増加、ケトアシドーシスを呈する可能性がある。「これらのリスクをいかにマネジメントするかが、スーグラを使用するうえでのポイントとなる」(加来氏)

同剤の併用にあたり注意すべき症例として、ケトアシドーシスのリスクが高い例が挙げられる。それは、女性患者や痩せている患者、インスリンポンプ使用患者だ。インスリン治療の中断や、20%を超える過剰な減量もケトアシドーシスのリスクを高める。海外のSGLT2阻害剤の臨床試験では、インスリンポンプのトラブルで計画通りのインスリン投与ができなかった例での有害事象が報告されているという。加来氏は、同剤が1型糖尿病患者のさらなる血糖コントロールの改善に寄与することへの期待を覗かせるとともに、同剤の併用を開始する際には、インスリンを減量する速さや量に注意し、患者の状態を見ながら慎重に投与するよう、適正使用を呼びかけた。

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