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細胞内タンパク質の凝集状態測定する新手法開発-北大ほか

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2015年12月25日 PM01:30

独自開発のSSPDで「」成分を検出

北海道大学は12月22日、、大阪大学と共に、溶液中の蛍光分子の回転拡散運動を計測する方法の開発に成功したと発表した。


画像はリリースより

これは、独自開発した検出器(超伝導ナノワイヤ単一光子:SSPD)を蛍光相関分光顕微鏡(FCS)のカメラとして使うことで、従来はノイズに隠れて検出できなかった「回転拡散」成分を検出することに世界で初めて成功したもの。研究成果は、12月14日付けの米国科学誌「Optics Express」に掲載された。

開発に当たって、今回用いた測定試料はQrodと呼ばれる直径約7nm、長さ22nmの棒状分子で、このQrodが回転しながら拡散する様子を、SSPDを組み込んだ蛍光偏光相関分光法(pol-FCS)により観測した。

Qrodの回転拡散による信号は、その分子形状から1μs付近に現れることが予想されるが、従来、FCSで検出器として使用されてきたアバランシェ・フォトダイオード(APD)では、アフターパルスによる雑音に埋もれて観測できなかった。そこで、この蛍光顕微鏡用に開発したSSPDを用いることで、1μs付近にQrodの回転拡散による信号を観測することができた。得られた信号の理論曲線によるフィッティングから求めた分子形状はQrodの形状とほぼ一致することから、SSPDにより観測した信号がQrodの回転拡散によるものであることが裏付けられたとしている。

アルツハイマー病などの初期診断に期待

これまでは1台のカメラではタンパク質の回転拡散運動を計測することができず、そのため、その形状を同定することは困難だった。しかし、今回の開発で、タンパク質分子の回転拡散が測れるようになり、プリオン等の凝集性タンパク質が凝集体を形成する初期段階、すなわち、タンパク質が2量体や3量体になったことをその形状から簡易に同定することが可能になる。

新しい計測手法は、凝集性タンパク質が原因となるアルツハイマー病やプリオン病などの神経変性疾患の初期段階を超早期に診断するのに極めて有効な手法となる可能性があるとともに、これまで主に通信分野で利用されてきたSSPDカメラの医療分野への応用も期待されるとしている。

なお、開発では、NICTが可視波長SSPDの高性能化と測定試料の作製を、北海道大学が可視波長SSPDを組み込んだFCSシステムの構築と測定及びデータ解析と測定試料の作製を、大阪大学はFCSシステムの構築と測定試料の作製を行った。

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