医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

Home > 医院経営のノウハウと舞台裏 > 医療法人好誠会 西野クリニック 西野好則院長

医療法人好誠会 西野クリニック 西野好則院長

読了時間:約 6分56秒  2010年09月21日 AM11:08
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事は医療者のみが閲覧する事ができます。

あなたは医療者ですか?

 「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
 有力院長が次々と登場するので、月に2回はアクセスして、「自院の方向性チェック&考察」の機会にご利用ください。
医療法人好誠会 西野クリニック
西野 好則院長

ホスピタリティの意識徹底と
自由診療の積極実施で
「患者数が県下最多の泌尿器科」に

一番の苦労

診察が深夜にまで及ぶことも。

 開院した当初は、患者さんへの薬の説明や生活改善の指導など、すべて自分で行っていた。だが、患者さんときちんとコミュニケーションをとるよう、一人ひとりに時間をかけていたため、患者数が増えるにつれ時間が足りなくなってきた。他院に比べて患者数が多いという訳でもないのに、診察時間が大幅に伸びてしまい、気がつくと深夜になってしまうこともたびたび。このままではいけないと思ったが、泌尿器科、皮膚科という特殊な疾患については、患者も知識のないことが予想以上に多いため、患者さんと接する時間を減らしたくはない。どうしたものかと考えた。
 解決策は、指導を看護師に任せることだった。もちろん、患者さんへの指導を、私と同じようなレベルで対応できるようにするには、看護師達に専門的な勉強をしてもらわないといけないし、精神的な負担も増える。当然それに見合う賃金を支払わなければならない。また、看護師のノウハウ向上を図るため、月2回は勉強会を開催して、指導方法や専門知識を共有するようにしている。
 具体的にどうするかというと、患者さんが来院したら、まず看護師が問診する。そのあと私が診察して病状や治療方針などの説明や指導を行う。そしてさらに、私の診断結果を元に、看護師から患者さんへ指導を行うという3段体制にしている。これにより、患者さん一人あたりの指導時間を減らすことなく、多くの患者さんに対応できるようになった。
 診察時に私からも症状や使う薬、生活改善の方法など必要な説明はしているが、なかなか1度では理解できなかったり、後から疑問が浮ぶということがある。そうした場合もこの3段体制で解消でき、細やかな指導ができるため、患者さんの満足度も高くなったようだ。「症状や診察して欲しいことを、言い忘れなく言えるようになった」、「二回指導してもらえるのでわかりやすい」と高評価をいただいている。

一番の秘訣

「病診連携」、「診診連携」を推進するお付き合い

 私は15年間の病院勤務を経て当院を開院した。この勤務医時代に築いた人脈は開院後のクリニック運営にとって、非常に大きなメリットになっている。当時は勤務医を続けていくことを考えていたため、将来の独立を意識して特別な人脈作りをしていたわけではない。岐阜大学泌尿器科一門は、非常によい先生ばかりで、先輩の先生方にも、同僚、後輩の先生方にも非常に恵まれた。同じ仕事をする仲間として、互いに助け合ったり情報交換をしたりするなど、とても仲良くつき合わせてもらい、その人間関係が現在まで続いて自然な形で「病診連携」が実現している。
 岐阜県総合医療センター、木澤記念病院、東海中央病院、郡上市民病院、犬山中央病院、岐阜市民病院、岐阜大学医学部付属病院などの総合病院とは相互に患者さんの紹介をしているが、これらの病院で診療にあたっている先生の多くは、勤務医時代に知り合った方々なので、患者さんの症状についての申し送りなども非常にスムーズに行うことができる。
 「病診連携」だけではなく、近隣の開業医の皆さんとも非常に仲良くさせていただいており、「診診連携」もうまく行っている。「診診連携」の場合には特に、相互の信頼関係が非常に大切だ。患者さんを紹介していただいた先生には、できる限りしっかりとお返事をさせていただくようにしており、また、紹介元の先生の顔をつぶさないよう丁寧に対応するようにしている。
 こうした「病診連携」や「診診連携」がうまくできると、他院からの紹介で患者数も順調に伸び、クリニックの運営もやり易くなる。また、患者さんにとっても安心して治療を受けていただくことができて、皆がハッピーだ。

一番の自慢

高いホスピタリティ意識のあるスタッフ

 開院するにあたり、勉強をしたのは『リッツカールトンホテル』や『ディズニーランド』のホスピタリティ。なぜリピートが多く、お客様の満足度が高いのか? それは、お客様第一の指導が行き届いていること、スタッフがそれぞれの仕事を愛しているからであり、会社側もそうしたスタッフの努力に応えられていることにある。それを当院にも活かしたいと考え、その意識を、看護師や受付事務のスタッフにも徹底している。
 当院のスタッフにいつも言っているのは、『自分が患者の立場になったとき、快適かどうかを考える』ということ。スタッフを採用する際にも、そのことをきちんと理解できるかを基準にしている。特に受付スタッフは、医療事務の知識が高いことよりも、接客ができるかどうかの方が重要だ。他の医院で勤務したことのあるスタッフは、このような“ホスピタリティ”という考え方に戸惑うこともあるようだ。
 細やかな接客というものは、一朝一夕にできるものではない。また、そのやり方はひとつということでもない。経営者として必要なのは、運営の方針、その理由などをきちんと伝え、スタッフたちが理解できるようにすること。そして、スタッフの適性をなるべく早く見極めることだと思う。適材適所で自分自身がやるべきことを明確に理解しているスタッフは、経営者の意図をしっかりと汲んで動いてくれるようになる。実際に、現在当院に勤めてくれているスタッフは皆、自身の能力をしっかり発揮し、高いクオリティの業務を行ってくれている。
 時折、スタッフが患者さんからの相談を私に伝えに来ることがある。それは、日頃からスタッフが患者さんのことを考えて親身に対応している証であり、そうでなければ患者さんがスタッフのことを信頼して悩みを打ち明けてはくれないだろう。
 医師、看護師、事務スタッフ、誰をとっても、患者さんより上の立場ではない。たまたま患者さんを診ることができる知識を持っているに過ぎない。専門科でない病気にかかれば、私達も「一患者」となるのだ。そうした気持ちを、私も含め当院のスタッフは全員が持ち続けるようにしている。この姿勢の徹底で、患者さんにとって快適なクリニックになっていると自負している。

一番の工夫

自由診療は利益よりも相乗効果が大きい

 開院して半年ほど経ってから、患者さんからの要望を受けて自由診療を導入した。自由診療部門の収益は、全体の約2割程度。あくまで保険診療がメインで、自由診療は患者さんへのサービスというつもりで低価格でやっている。しかし、片手間にやっているつもりはなく、機材などは最高性能のものをたくさん取り入れ、自由診療用の待合室や治療室も保険診療用とは別に増設し、患者さんからは、好評を頂いている。
 自由診療で一番ニーズがあるのが「医療レーザー脱毛」で約5割を占める。最近は少数ではあるが、男性の希望者も増えている。そして、「シミ、そばかすのレーザー治療」や「ホクロレーザー治療」といったアンチエイジング領域の希望者も多い。
 男性からはEDやパイプカットの相談もある。こうした患者さんはインターネットを活用することが多いため、ホームページでも積極的に案内をしている。
 とはいえ、自由診療は「患者さんへのサービス」という位置づけで行っているため、料金設定は「赤字が出ない程度」にしている。でも直接的な利益ではないところで、自由診療による経営効果が生まれている。それは、病院特有の「敷居の高さ」が軽減できたこと。特に泌尿器科というと、どうしても患者さんは恥ずかしいという気持ちを抱きがちだが、女性でも通院しやすい環境になったという点。また、自由診療の施術に通っているうちに、なかなか病院に行けなかった悩みを相談できるようになり、保険診療にかかるというケースもある。逆に保険診療の患者さんが自由診療を受けることもあるので、患者さんとの接点がより継続的なものになって、互いの理解が進むというメリットも大きい。

一番の夢

患者さんを最期まで診られる環境にしたい

 私が泌尿器科を専攻した理由は、“最初から最期まで診られる科だから”であった。内科や外科などの医師は、その分野でのプロフェッショナルになっていくが、患者さんは途中の段階で他の診療科に引き渡すことが必要になり、最初から最期まで診ることは難しい。ところが泌尿器科では、初診から、投薬治療、手術そして終末期まで、一貫して診ることができるケースが多い。
 しかし、クリニックでは比較的軽度な症状を中心に診るのが現実だ。開業して私の専門とする排尿障害などの症例を数多く処置することができるようになった点は嬉しい。だが、一方で入院や大きな手術が必要な場合には、どうしても総合病院にかかって頂くことが必要になる。手術後や終末期など、しっかりと診たいと思っているが、なかなかままならない。そのため、休診日を使って岐阜県内はもとより、愛知県や静岡県、滋賀県などまで足を運び、泌尿器手術を行うなど、先端知識と技術の維持に努めている。
 “最初から最期まで患者さんを診たい”という気持ちは今も変わっていない。だから、将来的には小規模でもよいので入院設備等を整え、泌尿器科癌の患者さんのターミナルケアまでおこなえる医院にしていきたいと考えている。
 泌尿器科癌の患者はほとんどが高齢者である。介護施設は今後たくさんできるだろうが、泌尿器癌は特殊な処置が必要な場合が多く、一般介護での対応が難しいことも少なくない。
 何より、癌の発見をしても、そのあと終末期になると何もしてあげられないジレンマがある。したがって、泌尿器科癌に特化した入院施設を作っていきたいと思っている。

医院プロフィール

医療法人好誠会 西野クリニック

〒504-0941 岐阜県各務原市三井町1-55-2
TEL:058-371-0500
医院ホームページ:http://www.nishino-cl.com/e/index.htm


詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

泌尿器科、女性泌尿器科(頻尿・尿失禁)、小児泌尿器科(夜尿症・先天性疾患)、皮膚科、ED(男性更年期)

理念

気軽に受診していただけるクリニックにするため、スタッフ一同、心のこもった医療を提供する。

院長プロフィール

西野 好則(にしの・よしのり)院長略歴

1990年 高知医科大学医学部卒業
1995年 岐阜大学医学部付属病院医員
1995年 岐阜大学医学部助手(排尿障害専門外来を開設)
2000年 岐阜大学医学部講師
2002年 東海中央病院泌尿器科部長
2003年 岐阜市民病院泌尿器科副部長
2005年 医療法人好誠会西野クリニック開院 理事長就任

認定・専門医

岐阜大学医学部非常勤講師、医学博士、日本泌尿器科学会 専門医、日本泌尿器科学会 指導医

所属学会

日本泌尿器科学会、日本排尿機能学会、日本夜尿症学会、日本女性骨盤底医学会、日本老年泌尿器科学会、日本Endourology&ESWL学会、International Continence Society(国際禁制学会)

取材日程が取れず、休診日の日曜日に時間をとって頂き訪問。
院内はキレイに保たれていて、まるでホテルのような雰囲気に驚いた。