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秀(ひで)クリニック 高島秀夫院長

読了時間:約 5分22秒  2010年05月06日 AM11:26
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高島秀夫院長

「家庭医」と、泌尿器の「自由診療」とを両立
秘訣は、地味な努力の積み重ね

一番の苦労

医者の熱意が響かないドライな患者さんとのやりとり

hide_clinic_03 開業してまず驚いたのが、受付スタッフに対してぞんざいな態度をとる人が多いこと。接遇には十分気をつけているので、スタッフの失礼ではないと思う。なかでも保険証の確認については、「何回も見せる必要ないだろう」と、怒り出す人が多い。診察室の中では丁寧なのに、受付にはなぜひどい言葉を浴びせるのか。「日本人は、サービスを受ける側に立つと無礼になる」という印象だ。
 近所の院長が急逝した時にも驚かされた。私なりに遺志をつごうと患者さんや事務員さんを引き受けた。しかし私が「このたびは○○先生がお亡くなりになり、残念でしたね。」と神妙に挨拶をしても、あまり気に留めずに「薬さえ出してもらえれば」とドライに受け応える人が多かった。葬儀で充分に悲しんだ後だったのかもしれないが、何年もかかっていた医師に対して惜別の情を持ってくれないのかと淋しくなった。
 他にも、社会一般の休日と違う時に休んだら「優雅ですね」と嫌味を言われた経験も。正直、患者さんに疲れることもある。
 それでも親切で丁寧な医師であり続けようという信念に変わりないが、患者さんが皆それに応えてくれるわけではないと分かってきた。人生を通じて深い関係を築けるケースもあるだろうが、過剰にウェットな期待をすべきでもない。つかず離れずの診療を続けるべし、というのが今の結論だ。

一番の特徴

自由診療は追加的なもの、本業を大切に

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手術室まで採光にこだわっていて、明るい

 当院は、勃起障害(ED)、性病で自費希望のケース、泌尿器科小手術、検診、治験その他の自由診療と、内科を中心とする「家庭医」としての診療を両立させている。とはいえ、あくまで保険診療が本業だ。保険外の比率は、患者数、収入ともに1-2割といったところ。この割合を今後伸ばすのは難しい。
 開業医向け雑誌には、「にんにく注射や自費治療、物販など、自由診療で収入を伸ばせ」とする記事があるが、レーシックや美容外科に特化したクリニックを除き、自由診療に増収期待を持つのは危険。有効なのは「治験」くらいで、あくまで本業に注力することが一番の増収手段。「風邪の患者を大切に」と先輩に教えられたが、そのとおりと思う。
 当院も、元々は自由診療に力を入れるつもりはなかった。開業当初が閑古鳥だったので、ホームページに勃起障害(ED)、性病などの説明を丁寧に書いていたら、「どこへ行ったら良いか分からなかった」という泌尿器科関連の患者さんがポツリポツリと現れて、それが積み重なって実績になったに過ぎない。
 むしろ、性病やバイアグラなどの自費診療の表示をしたところ、「せっかく良いお医者さんと思ったのに、あそこは、イヤラしい医療もやっているのよ。かかりたくない」と近所で陰口されることも。「脳であれ下半身であれ、身体に優劣はない」と思っているが、そういう話を聞くとがっかりする。

一番のアドバイス

根気が大事、集患も採用も経営ノウハウも

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地域住民の健康診査が完結できるよう、X線に加えて眼底検査機や骨密度測定装置も導入

 それでも地域の患者さんが順調に増えていったのは、地味な仕事を丁寧に続けているからだろう。私は往診もやるし、数多くはできないが看取りをすることもある。そうして丁寧に対応している姿を、近所の人は見ている。「開業医の仕事は地味なもの」と割り切って粘り強く信用を築くしかない。
 採用・労務面では、よく観察し話し合うこと。困った人を雇い続けるより、人手不足の方がマシだと思うようになった。院内の雰囲気が悪くなるので、良い人が来るまで根気よく待つ。医師雇用も然りで、雇ってみると支払う給料に見合わないことも。
 経営ノウハウにおいても、第3者を頼り過ぎないこと。コンサルタントは、開業時は一生懸命やってくれるが、逆に言うとそれまでだ。「患者さんが来ない不安」と戦うのは結局自分ひとりしかいない。開業前に、必ず先輩開業医を数多く訪問して、観察し、教えを乞うべきだ。私ももっと見ておけば良かった。

一番の工夫

電子カルテの2人同時操作で、診療効率が格段にアップ

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診療時には、背面のモニターセットの所にスタッフが立つ

 電子カルテのおかげで非常に診療効率が上がった。電子カルテといっても、単に「便利な電子文具」と割り切って使う。機能を追求するよりもメンテナンスと使い勝手を重視すると良い。画像ファイリングや検査データを統合できる高額なシステムは、ペイしないのではないか。
 私が編み出した利用法は、2人同時操作。ひとつのパソコンからコードを枝分かれさせて、画面、キーボード、マウスの全く同じセットを2つ診察室内に稼働させている。医師と、ナースまたは事務スタッフが、全く同じ画面を見て、患者情報をリアルタイムで共有できる。私が指示せずとも検査キットや資料をサッと出してもらえるし、次の患者さんのデータを確認して準備を始めてもらえて、時間の無駄がない。さらにスタッフが「私も診療に参加している」とモチベーションアップする。
 所見などは、なるべく英語を使わず日本語で記載する。最近は、入力が得意なスタッフに下書き入力してもらうことも。医師が後でカルテを加筆修正すれば、普段は患者さんに向かい合って話ができるから、「パソコンばかり見る診療」にならずに済む。医師がすべてのパソコン操作をせずに、考えることや診察することにエネルギーを使うべきだろう。

一番の喜び

治療に限らず、やった仕事に感謝されるのが開業医の本懐

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待合室は、展示希望の患者作品のギャラリーにもなっている

 問診票で認知経路を見ているが、やはり知人家族の口コミが6割以上。評判に勝る広告はない。前述したように、一人ひとりの患者さんにきちんと親切丁寧に対応することは、確実に患者増につながる。
 医師としての喜びは、やはり「感謝されること」に尽きる。それは治療成果に限った話ではない。ある時、「胸が苦しいから、診て欲しい」という電話がかかってきたが、状況を聞き取りして当院に呼ぶより「すぐ救急車を呼んで」と判断したら、夕方になってご家族が寄ってくれて「心筋梗塞でした、手遅れになるところでした」と感謝をされた。
 あるいは勃起障害(ED)への処方をする際、「薬局では人前で根掘り葉掘り聞かれて、辛い」という人には、看護師にも席を外してもらって薬を直接渡すこともある。そんな時には「ホッとしました」と感謝をされる。あるいは泌尿器の治療法をホームページに詳しく解説したことにも、「読んで安心できた」と感謝されることが多い。そうした感謝は、「社会ニーズや、一人ひとりの心理状況にあわせた対応ができた」という証なので、嬉しい。そうした繰り返しを地道に重ねるのが開業医の姿だと思う。

医院プロフィール

秀(ひで)クリニック

東京都 板橋区 赤塚新町 3-5-1
Tel. 03-3975-5780(代表)
医院ホームページ:http://www.hide-clinic.com/

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住宅街の一角に突如、ギリシャ様式を思わせる円柱の玄関ポーチが現れる。窓を多くすることに、最後まで設計士とやりあったという。テレビのロケに使われたこともある。
東京メトロ有楽町線、地下鉄赤塚駅より徒歩2分。詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

泌尿器科・皮膚科・内科

理念

親切

院長プロフィール

高島秀夫(たかしま・ひでお)院長略歴

1990年 札幌医科大学 医学部 卒業
1990年~1992年 順天堂大学 泌尿器科 入局
1992年 越谷市立病院 泌尿器科 勤務
1993年 三井記念病院 泌尿器科 勤務
1994年~1996年 順天堂大学病院 勤務
1997年~1998年 東京都立神経病院 神経内科 勤務
1998年~1999年 同愛記念病院 泌尿器科 勤務
1999年~2000年 順天堂大学病院 勤務
2001年~2003年 江東病院 泌尿器科 勤務
2004年~ 秀クリニック開設

所属学会・資格ほか

日本泌尿器科学会・認定医、排尿機能学会、性感染症学会

高島秀夫(たかしま・ひでお)院長
185センチの長身だが「上からの物言い」でなく、むしろ「自分のできないこと、弱点」
から先に話す語り口調で、いつの間にか安心感いっぱいの高島ワールドに引き込まれる。2階建ての院内掃除は業者委託でなく、スタッフと一緒に行う。
山登りと写真が趣味の2児の父。