東京
(ビジネスワイヤ) – 横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:西島 剛志)は、プロセスデータ解析や、設備の状況、操作履歴などのデータの解析を行い、品質の異常や生産性の低下を早期に発見できる解析ソフトウエア「Process Data Analytics(プロセスデータアナリティクス)」を開発しましたのでお知らせします。当社の解析サービスと組み合わせて品質安定化ソリューションの一つとして提供し、お客様の製品の品質安定化と継続的な品質改善活動の実現に貢献します。発売は2017年3月を予定しています。
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Process Data Analyticsの画面(画像:ビジネスワイヤ)
開発の背景
近年、製造業では、多様化する市場ニーズに迅速に対応することが求められるにもかかわらず、製品にはより安定した品質が要求されています。実際の製造現場では、原料品質のばらつき、製造設備の老朽化などが製品品質を劣化させる要因となっていますが、たとえサプライチェーンの変化による原料の組成の変更などがあっても、出荷する製品に対しては高い品質が求められます。また、製造業のお客様は、生産現場におけるさまざまなデータを迅速に分析、活用して品質のより一層の向上につなげるため、各生産工程での品質の作り込みに取り組んでいますが、熟練した運転員の経験と知識に頼っている部分が多くありました。
当社は、これらの課題を解決し、製品の品質安定化に貢献するソリューションとして、2008年からプロセスデータを基にした解析サービスをお客様に提供してきました。これまでの契約実績は、化学業種を中心に日本で100を数え、多くのお客様から信頼を得ています。
今回、この解析サービスの提供を通じて自社で開発・活用してきた解析業務のためのソフトウエア「Process Data Analytics」を発売し、お客様の品質維持・改善活動を支援します。「Process Data Analytics」は、多変量解析のためのパターン認識技術の一つである「MT(マハラノビス・タグチ)法」※1を用いています。実際に改善業務に携わってきたエンジニアが仕様を検討し、開発したため、お客様との議論やサービスを提供するなかで得られた知見が生かされています。
ソフトウエアの特長
「Process Data Analytics」は、プラント情報管理システム(PIMS)に蓄積された温度、圧力、流量、液位などのプロセスデータや、設備の稼働・保守状況、操作履歴などのデータを入力して解析を行い、品質異常の予兆を検出します。本ソフトウエアは、Windows®が搭載されたPC上で動作し、複数のデータを統計的に扱う多変量解析の技術「MT法」により、解析対象のプロセスデータを正常時のデータと比較してかい離具合を高精度に把握します。プラントが正常時と異なる動きをしていれば、その動きを品質異常に関係する可能性がある兆候として検出します。4M(Material:材料、Method:手順、Machine:装置、Man:人)を切り口にプロセスデータを分析することで、プロセス変化の原因の見える化にも活用でき、製造現場の改善活動に役立てることができます。
データの入力は、通常は、PIMSや分散形制御システム(DCS)、プログラマブルコントローラ(PLC)に蓄積されたプロセスデータをCSV形式に変換して行いますが、当社のPIMSである「ExaquantumTM」と接続すれば、本ソフトウエア上のメニューボタンをクリックするだけでデータを取り込むことが可能です。
主な特長は以下のとおりです。
1. 品質異常の早期発見により出荷製品の品質を向上
生産工程のプロセスデータの変化によって品質異常や生産性の悪化を早期に検出し、品質改善のための対策を講じることができます。製造現場の品質改善活動のツールとして活用できます。
2. 不具合を見逃さない品質検査の高度化を実現
生産工程のプロセスデータの変化を検出することで、品質異常を起こす兆候を早期に検出し、従来の出荷前検査では見落としていた不具合を発見することができます。品質保証・品質管理部署による品質検査の改善に役立ちます。
3. MATLAB®との連携により、解析作業の改善が可能
解析ツールとして広く使われている、MathWorks®(マスワーク)社の数値解析ソフトウエアMATLAB(マトラブ)と連携しています。お客様自身でエンジニアリングをすることで必要なMATLABの解析機能を利用できるようになり、解析作業を改善することができます。(MATLABを利用するには、同ソフトウエアのライセンスを購入いただく必要があります。)
4. アングルトライ社のMT法関連の技術を導入
パターン認識技術として実績のある「MT法」を用いることで、迅速かつ高効率の解析ソリューションを実現します。当社はアングルトライ株式会社※2と、同社がもつ「MT法」に関する独自技術の利用契約を締結し、その技術を用いてコンサルティングやシステム構築提案を行います。
【 主な市場 】
石油、石油化学、化学、鉄鋼、紙パルプ、薬品、食品、自動車、ガラス、ゴム、電機・電子などのプラント
【 主な用途 】
製造現場の品質改善活動や、品質保証・品質管理部署による品質検査の改善
今後の展開
当社は、中期経営計画「Transformation 2017」の重点施策の一つとして、制御事業における高度ソリューションビジネスの拡大を掲げています。これまで、生産効率や安全性の向上、エネルギー効率の改善、設備の有効活用などを実現する多様なソフトウエアパッケージをベースに、主として製造業のお客様を対象に高度ソリューションを提供してきました。今後もソフトウエアの開発やアライアンスなどを進めることで高度ソリューションの拡充に努め、お客様の課題解決に貢献し、お客様とともに新たな価値を創造し成長することを目指してまいります。
※1 MT(マハラノビス・タグチ)法:
MT法は、マハラノビス博士が変数間の相関から導きだしたマハラノビス距離を品質工学の体系に取り入れたパターン認識の一つで、基準となるデータと判断対象サンプルの離れ具合をマハラノビス距離として算定し、定量的に違いを判断します。タグチは品質工学の創始者として著名な田口玄一博士を指します。
※2 アングルトライ株式会社:
MT法を用いたコンサルティングやソフトウエア開発を手掛ける企業で、国内を中心に500件以上のソフトウエアライセンス供与の実績があります。同社の技術は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からイプシロンロケットの自律点検システム検査に採用されています。
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